今回は、北海道の食品メーカーで、自社の商品のよさを伝える手段として社内で飲食店事業を始めた際、実際にゼロから始めて5億円の売上を達成した飲食店事業経営者である佐々木氏が実践した方法をご紹介します。
飲食店経営を成功させたこの方法には、5つのポイントがありました。
実際に業績を5億円まで伸ばし、効果が検証されている方法ですので、取り入れてみてはいかがですか。
お客様第一主義
「お客様第一主義」はどこの接客業でも言われることですが、それが本当に実践できているかということが、1つめのポイントです。
以下は、飲食店でよく見かける光景です。
「わかってはいる。でもどうしたらいいのだろう。」と思う方もいらっしゃるかもしれません。それもそのはずです。
「スタッフの残業はなるべく抑えたい」「今日は閉店後にミーティングが控えている」など、経営者は、いろいろな課題を抱えているからです。それでは、この会社では実際に、どのような対応をしていたのでしょうか。それは、次のようなものです。
「思い」が「行動」に変換されていて、それが組織に浸透し、継続的に実践できるところまで落とし込まれているか、というところがポイントです。
「お客様第一主義」のような基本的なことも、「組織に浸透」させて、「継続的に実践できる」仕組みをつくるには、時間と根気が必要です。このハードルを越えて、お客様と向き合うことで、お客様への誠意が伝わって、ファンが増えてゆきました。
このお客様第一主義が、繰り返し来店してくださるファンを作り上げてゆきました。
徹底した環境整備
2つめポイントは環境整備です。
この会社では、環境整備こそが「運を拓く」という経営者の信念の下、「長」とつく人は全員、毎日「トイレ掃除」を実行していました。店舗でのトイレ掃除は店長の仕事、本社のトイレ掃除は、代表取締役に就任した後も、佐々木氏自らが毎日行っていました。
その理由は、次のようなものです。
これは、最初に毎日のトイレ掃除で自らを鍛えていれば、「もう自分は偉い立場なのだから、トイレ掃除は新人スタッフがやればよい」という考えにはなることはないだろう、という信念に基づくものです。
その意味で、佐々木氏は代表取締役になった後も、スタッフとお客様への感謝の気持ちを込めて、毎日トイレを掃除を繰り返していました。率先垂範で、自分の背中をスタッフに見せて、育てていたのです。
また、トイレ以外の場所を含め、環境を徹底的に整備することにより、店舗の発展にはかかせない、次のような成果を得ることができました。
「備えあれば憂いなし」。常に完璧な環境整備を心がけ、「真心を込めて」行うことで、無事故という大きな恩恵がもたらされました。
スタッフを育てる覚悟
3つめのポイントは、スタッフを育てる覚悟を経営者が持つことが重要だということです。
飲食店の経営者の方が、スタッフの採用・確保に苦労しているという話を、よく耳にします。2021年9月30日に緊急事態宣言及びまん延防止法重点措置が全都道府県で解除され、同年10月25日に東京都をはじめとする5つの都府県で飲食店に対する営業時間短縮の要請が解除されてからは、「アルバイトの確保に苦労しています。」と語る飲食店経営者の方の話が、テレビやインターネット上の記事で伝えられています。
しかし、佐々木氏は「スタッフの採用に困ったことはない」と言います。その驚くべき理由は、次のようなものです。
店舗では、「労働分配率」の指標を基に、成果がでた時には、店長に大きなインセンティブを与えていました。より少ない人数でより大きな売上を構築した場合、店長がインセンティブを受け取るというものです。その金額は小規模な会社の役員報酬に匹敵することもありました。
一方、それ以外の投資や修繕、すぐには変動できない家賃、見栄えに関わる経費などの店長では工夫できない経費を経営側の責任として明確に区別していました。
スタッフ育成に関しては、未経験のスタッフを含め、最高のおもてなしができるまでに育てる覚悟を持って、迎え入れていたといいます。
採用したスタッフが一人前に育ってくれて、お客様が繰り返し来店してくださって、売上も上がれば、自分自身のインセンティブとして返ってくるので、店長は一生懸命にスタッフの育成にあたりました。
「育てる覚悟」と「努力が報われる仕組み」が、離職率の低さを実現していたのです。
仲間としての組織
4つめのポイントは、スタッフは大切な仲間であるというカルチャーが浸透していたことです。
これは、離職率が低く、飲食店事業が発展していったもうひとつの理由でもありました。育て上げたスタッフと「真の仲間」としての関係を構築していました。
スタッフが店を辞める理由は、「待遇への不満」以上に「人間関係」が大きな原因だと言われています。
この飲食店では、辞めたスタッフも仲間だと認識されていて、次のような対応を取っていました。
また、大阪で行われた店長研修の宿泊先は、リッツカールトンでした。一流といわれる「紳士淑女のおもてなし」を実体験してもらうためです。
10年勤続した社員には、ハワイでの研修の機会もありました。
研修は、学んだ内容によってスタッフが育成されるためのものですが、ここでは「大切にされている」ことをスタッフが実感できる場でもあったのです。
「愛情には愛情で応える」という連鎖ができ、大切に育てられた店長は、自分の部下であるスタッフにも同じ接し方で育ててゆく好循環がつくられていました。それが、繁盛する店を作り出す基礎となりました。
ぶれない軸を持つ
5つめのポイントは、ぶれない軸を持つということです。
佐々木氏は信念の人でした。そして率先垂範で、自らがやってみせ、ぶれない経営判断をし、真にスタッフを思いやることで、業績は向上し、離職率は下がり、来店してくださるファンが増えてゆきました。
「三方よし」というのは、「お客様」「従業員」「世間」がすべて満足してこそ商売はうまくいくという近江商人の考え方です。この会社ではもうひとつ「納入業者を含めた取引先」も繁栄してこそ、自分たちの成功はあるという考え方がありました。
佐々木氏は、常日頃から何度も「納入業者の方々にもいつも丁寧に接する」ことを、店長にそして店舗のスタッフに伝えていました。そして、そんな対応を受けていた納入業者の方々に、いつも感謝されていただけでなく、ピンチの時に助けられたり、協力者を紹介してもらったりという人の輪ができていったのです。
応援してもらえる、協力者が現れるような「徳」を積むことが、一見遠回りに見えて、実は成功への近道だったのです。
まとめ
これら5つのポイントを、皆さんはどう感じたでしょうか。取り入れられるものがあれば、ぜひ実践してみてはいかがですか。
佐々木氏の飲食店経営の成功ストーリーは、この記事でご紹介できなかったものも含め、Kindleの電子書籍「『繁盛する店』を生み出す飲食店経営」でご紹介していますので、ぜひこちらもお読みいだけると、うれしいです。
発売時には、2つのカテゴリーで売れ筋ランキング1位(ビジネス組織改革、企業倫理)、6つのカテゴリーで新着ランキング1位(ビジネス組織改革、企業倫理、職場文化、ビジネス教育、ビジネス人物伝、リーダーシップ)を獲得。
経営者の半生に焦点を当て、電子書籍にして広めてゆくことをライフワークとする。
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※この記事は「『繁盛する店』を生み出す飲食店経営」の著者、伊藤まゆみ氏との協力のもと制作しております。
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