飲食店の運営にあたって、売上分析を適切に行うことは売上を向上させることにつながる大きなポイントです。では、売上分析にはどのような種類があり、売上向上につなげるにはどのような方法があるのでしょうか。
今回は、飲食店における売上の分析方法や売上向上のヒントについて解説していきます。
目次
飲食店における売上分析の基本
「売上」とは、「客数×客単価」で算出することができます。したがって、売上向上に必要なのは「客数を増やすこと」「客単価を上げること」「客数を増やしつつ、客単価を上げる」の3つに絞られます。それらが明確になることで、売上に変動があった場合に、客数の増減によるものか、客単価によるものかが判断できるようになります。
さらに細かく分析するとすれば、客数については、男女別、年代別、地域、新規かリピーターか、などさまざまな分析方法があります。客単価については、一品ごとの価格や注文数、主食かサイドメニューかなどメニューの種類による分析が可能です。ほかにも、曜日別や時間帯別といったことからも検討材料が見えてくることもあります。
ちなみに、「売上」と「利益」は意味が異なるので注意が必要です。売上は、料理などの商品やサービスの提供に対して得た代金の総額金額であり、利益は売上からコストを引いたものをさします。
店舗の売上分析に必要なデータと求め方
店舗の売上分析に必要なのは、「客数」「購買率」「平均客単価」の3つのデータです。客数とは、購買の有無を問わず店舗内に入った客の人数、購買率は「購買客数÷客数」で算出することができます。さらに平均客単価を算出するには、「売上総額÷購買客数」を計算すれば、1回の購買で客が支払った平均金額がわかります。先に述べた「売上=客数×客単価」もこれらのデータから算出できるでしょう。
また、Who(だれが)、When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)の5W1Hの数値があれば、売上分析をさらに細かく算出できます。
顧客を軸にしたRFM分析
売上分析をする際には、さまざまな点を軸にして分析することができます。ひとつ目として、顧客を軸にした「RFM分析」を紹介します。
分析方法
RFM分析とは顧客を軸とした分析の中でも、Recency(最新購買日)、Frequency(来店頻度)、Monetary (累計購買金額)の3つの指標でランク付けをする手法です。ランクをR、F、Mそれぞれ5段階に分けて、例えばRであれば、1週間以内に購買した顧客はランク5、2カ月以内ならランク3、半年以内はランク1 というように顧客をランク分けします。F、Mについても指標を設けてランク分けしていくことで、優良顧客を見極めていきます。RFM分析によって、具体的に以下のような解釈ができます。
- Rの数値が高いほど、将来収益に貢献する可能性が高い
- Rの数値が低い場合、他のFとMの数値が高くても、競合店に奪われている可能性が高い
- Rが同じ場合、Fの数値が高いほうが、常連客になっている
- Rが同じ場合、FとMが高いほうが、購買力がある
- R、F双方の数値が高くても、Mの数値が少ない場合は購買力が低い
注意点
上記のようにランクをR、F、Mそれぞれ5段階に分けていく場合、「1、1、1」から「5、5、5」まで125通りという膨大な仕分けになってしまいます。そのため、ある程度の区分けに絞ることもポイントです。
ランク分けとは優劣ではなく、「店にとって良い顧客を見分ける」ための方法です。ランクの高い顧客に対しては、さらに優良顧客であり続けてもらえるような特別感を与えるサービスを行い、反対に全てのランクが低い顧客には、来店頻度を上げてもらえるような施策を練ることが重要でしょう。
商品・メニューを軸にしたABC分析
「ABC分析」とは、商品・メニューを軸にした分析方法です。分析方法と注意点を紹介します。
分析方法
ABC分析では、売上高をもとにメニューの重要度や優先度を考えることになります。売上高の高い順から1位、2位とランク付けをして降順に表組みにします。続いて、それぞれのメニューの構成比を割り出します。構成比とは、「メニュー1種類の売上高÷メニュー全体の売上高」で算出できます。
それらをA、B、Cの3つのグループに分けることで、力を入れるべきメニューや改善すべきポイントがある程度のまとまりで見えてきます。ABCの線引きに明確なルールはありませんが、上の図では例として累計構成比上位80%までをA、81~95%までをB、96%以降をCとしています。参考にしてみてください。
注意点
ABC分析をする中で、「売上」だけに着目してしまうと、原価の高低を見落としてしまい、売上が高くて原価も高いということが生じてしまいます。そのため、売上だけでなく粗利の数値でも分析することがおすすめです。また、複数店舗を持っている場合は店舗ごとの人気や売上も異なるため、店舗ごとの分析も行っていくと良いでしょう。
その他の分析方法
これまでは「顧客」「商品・メニュー」を軸にした分析を紹介しましたが、割引クーポンの利用などの施策別に分析することで費用対効果を測定できます。また、ひとつのメニューにあわせてどのようなメニューが売れているのかという組みあわせを分析する「バスケット分析」という方法もあります。
さまざまな角度から分析を行うことで、細かな販売強化や対策を行うことができます。
分析から売上アップを目指すための施策例
- 客数の確保
- 原価率の管理
- 商品価格やメニューの見直しを含む客単価の向上
これまでに紹介した分析方法から売上向上を図るために、どのような施策が考えられるでしょうか。施策例をいくつか紹介します。
客数の確保
売上向上を目指すためには、新規顧客の獲得は重要なポイントです。新規顧客を増やすことで客単価が低いとしても売上向上につながることが期待できます。
新規顧客の獲得
新規顧客を獲得するには、これまで以上に広告を増やしたり、新たな視点でのメニュー開発を行ったりして新規顧客への対応を図りましょう。店舗のホームページやグルメサイトを活用して自店の売りをアピールしたり、SNSの口コミ力によって自店の存在を周知させたりすることも対策として有効です。
新たなメニュー開発で新規顧客獲得を狙う以外にも、これまでテイクアウトを実施していなかったのであればテイクアウトを開始して市場開拓するなど、今まで店舗が対象にできなかったターゲットを獲得する方法を多角的に見ながら検討してみましょう。
リピート顧客の獲得・キープ
せっかく新規顧客を獲得しても、リピーターにつながらなかったり、既存顧客を競合店に奪われてしまったりしたのでは、売上向上にはつながりません。なぜ顧客離れが進んでしまうのか、あらゆる視点から検証を行いましょう。メニューに飽きた、既存顧客に好まれていたメニューを一新した、来店しようとしてもいつも駐車場が満車で好きな時間に来店できなかったといった理由がないか探ってみましょう。
既存顧客に対してのアンケートの実施や、再来店を促すクーポン配布などの販促も必要に応じて検討していくことが大切です。
原価率の管理
飲食店の運営において重要な数値のひとつに「原価率」があります。原価率とは、食材の原価が売上高に占める割合をさします。売上分析の手法のひとつ、ABC分析で説明したように、ランク上位で人気のあるメニューの中にも、原価率が悪いために粗利が低いものが含まれていることもあります。
飲食店における一般的な原価率は30%が目安といわれています。しかし、30%を守ろうとして原価を抑えすぎることで食材の品質まで落としてしまうと、メニューとしての価値まで下げることになり、顧客の流出につながってしまうので注意が必要です。そのため、料理だけでなくドリンクメニューも含めて原価率を把握しておき、看板メニューだけは原価率50%にするなどの価格設定で調整を行うことがおすすめです。
商品価格やメニューの見直しを含む客単価の向上
冒頭でも述べたように、「売上」とは、「客数×客単価」です。つまり、客単価が上がれば客数が変わらなくても売上は上がります。ひとつのメニューと同時に注文されやすいメニューの分析などを踏まえ、顧客が気軽に注文できそうなサイドメニューの強化を図り、客単価の向上を目指しましょう。
仕入れの問題などでメニューの単価を上げざるを得ない場合、競合店での同メニューの価格相場を調査して、相場より高い価格設定にならないように注意しましょう。また、単価を上げたからには何らかのサービスをつけるなどの付加価値も検討しましょう。季節ごとや顧客のニーズに沿ったメニューを開発して定期的に改定を行うこともポイントです。
売上分析はPOSレジを活用しよう
POSレジとは、売上が生じた際の商品名や個数、価格、時間帯などの情報を記録し管理するレジシステムのことです。「誰が・いつ・どこで・何を」といった全ての購買情報が詰まっているため、リアルタイムでの売上分析が可能で、マーケティングに大いに力を発揮します。情報管理としては、在庫管理や従業員勤怠といった管理もできます。
POSレジは主として「タブレット型」「PC型」「据え置き型」といった種類があります。近年ではインターネット接続を活用し、タブレットだけでなくスマートフォンでPOSレジを利用できる「クラウド型」のPOSレジも登場しているので、自店の規模や目的によって使い分けると良いでしょう。
まとめ
今回は、飲食店の運営において、売上向上につながる売上分析の方法や種類を紹介しました。
売上分析には、顧客軸、商品・メニュー軸といったさまざまな観点からの分析方法があります。顧客軸であればランク分けすることで「自店に良い顧客の見分け」をすることができ、商品・メニュー軸であれば売上や単価の数値から割り出すことで、常に最優先のメニューや販促が必要なメニューといった把握が可能です。
売上分析を行うことで、新規顧客の獲得や原価率の管理、メニュー開発などさまざまな対策として活用することができます。日々の売上や客数といった数値は、将来的に継続して運営するための大切な数値です。さまざまな観点から、自店の売上向上につながる売上分析を実施してみてはいかがでしょうか。
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