テイクアウトは、飲食店の新サービスとして導入する店舗や、最初から移動販売のテイクアウトのみで開業するパターンなど、様々な方法で飲食業界に取り入れられている販売方法です。しかし、テイクアウト販売を始めるための「設備」にはさまざま決まりがあり、始める前に必ず確認しておく必要があります。

そこで、本記事では、テイクアウト販売を開始する上で必要な、具体的な設備や活用できる助成金などを紹介します。

テイクアウト販売をするための設備

テイクアウト販売をするために必要な設備は販売する商品によって変わります。ここでは、テイクアウト販売に要する設備を販売方法別にみていきましょう。

販売する商品によって必要な設備は変わる

テイクアウト販売に必要な設備は「何を」「どのように」販売するかで変わります。例えば、同じテイクアウトでも、焼き鳥とクレープではまったく異なる設備を用意しなければなりません。また、テイクアウトで販売する商品の調理場所と販売場所が異なる場合も必要設備が変わります。

テイクアウト専門店を開業するメリットについてはこちらの記事も参考にしてみてください。
https://www.i-nobori.com/media/3677

屋外で販売する場合の設備

屋外でテイクアウト販売するうえで注意すべきは「食品衛生上の問題」です。異物の混入や食品の温度管理といった屋外ならではの課題をクリアするための設備が必要です。

また、精肉や鮮魚を扱う場合や製造業の許可が必要な食品を扱う場合などは、飲食店営業許可を持つ場合でも別途、製造許可が必要となる可能性があります。

飲食店営業許可と製造許可のいずれも扱う商品の種類ごとに施設基準が決められているため、まずは保健所に確認を取ることをおすすめします。なお、お祭りやイベントなど一時的な出店では、臨時営業の営業許可があれば販売は可能です。

作り置きをする場合の設備

商品の作り置きを前提とするテイクアウト販売の場合、食品に応じた製造許可が必要です。たとえば、作り置きしたお菓子をテイクアウトで販売するには、衛生知識の保有を証明する「菓子製造業許可」の取得が必須です。

また、製造業許可の取得条件は扱う商品の種類ごとに細かく分けられ、それぞれ必要な設備が異なります。商品種類ごとの特化基準の例は次のとおりです。

そうざい製造業 ・包装室の作業面における照度を100ルクス以上に保ち得る照明設備を設ける
・製造室には、ねずみ、昆虫などの侵入を防ぐ設備を設ける
子製造業 ・製造する品目にあわせて必要な機材を備える
・冷蔵庫・冷凍庫を備えること
アイスクリーム類製造業 ・製造室には、清掃がしやすく、かつ、じんあいなどが落下しない構造の天井を設ける
・製造室には、手指の消毒設備又は消毒器具および流水式手洗い設備を設ける

カウンターなどのテイクアウト用設備

すでに店舗で提供する商品をテイクアウトする際の必要設備として、テイクアウト用のスペースを確保しておきたいところです。例えば「注文や待機の場所を設ける」や「ショーケースをレジ横に設ける」など、お客様の導線を考慮したスペースが挙げられます。

また、時間を限定したテイクアウト販売をする場合は既存の棚や机を活用して専用の低アウト用スペースを確保するのも方法の1つです。

テイクアウト専門店に必要な設備

一般的な飲食店と同様に、テイクアウト専門店を作る場合には専用の設備が必要です。
ここでは「飲食店営業許可」「移動販売」「店舗コンセプト」の3つの観点からそれぞれに必要な設備を紹介します。

飲食店営業許可を得るための厨房設備

これからテイクアウト専門店を開業する場合は「飲食店営業許可」が必要です。テイクアウトで扱う商品をもとに保健所に問い合わせ、許可を得るために要する設備を把握する必要があります。食品営業許可に必要となる設備の例は次のとおりです。

  • 区画された調理場
  • 調理場の照明
  • シンク
  • 冷蔵庫
  • 冷凍庫
  • 給湯設備
  • 扉付き食品棚
  • ふた付きゴミ箱
  • 換気扇・ダクト
  • 手洗い場
  • 食品衛生責任者プレート

ただし、すでに厨房設備を整えて飲食店営業許可を取得している場合は新たに取得する必要はありません。

移動販売をする場合に必要な設備

キッチンカーなどを使って移動販売をする場合にも、一般的な店舗とほぼ同様の手順で「飲食店営業許可」や「食品衛生責任者」などの取得が必要です。

飲食店営業許可を取得する際は、移動販売に使うキッチンカーなどを営業する地域を管轄する保健所に持ち込んで検査します。そこで、冷蔵庫や冷凍庫、給排水タンクの有無、シンクの数など、保健所が定める基準を満たしているかの確認を受けます。

また、車内で調理が完結せず自宅などで仕込みを行う場合は、社内と自宅のいずれも飲食店営業許可が必要となる可能性があります。まずは、管轄の保健所に必要な許可と設備について問い合わせてみてください。

店舗コンセプトに合った設備

テイクアウト専門店には「飲食店営業許可」や「製造許可」の要件を満たすための設備だけでなく、店舗コンセプトに合う設備の設置もおすすめです。コンセプトとは概念を表す言葉で、一般的には「全体を貫く基本的な考え方」を意味します。

これからテイクアウト専門店の設備を用意する場合は、カウンターや内外装、ユニフォーム、メニューなどをコンセプトに沿って揃えることで、一貫性や統一感のあるイメージをお客様に与える効果を期待できます。「また来たい」と思ってもらえるような設備の設置を意識してみてください。

テイクアウトに必要となる設備以外のもの

テイクアウト販売を始める際は、設備以外で必要になるものとして、次の3つが挙げられます。

  • 営業許可
  • 備品類
  • 訴求ツール

ここでは、それぞれの詳しい内容を解説します。

テイクアウト商品に対応する営業許可

前述の通り、テイクアウトを始めるには「飲食店営業許可」やテイクアウトする商品に対応する「営業許可」、作り置き販売する場合の「製造許可」などが必要です。テイクアウトでよく扱われる営業許可の種類の例は次のとおりです。

  • 菓子製造業
  • あん類製造業
  • アイスクリーム類製造業
  • 乳製品製造業
  • 食肉製品製造業
  • 氷雪製造業
  • めん類製造業など

各許可に関する決まりは各自治体の保健所によって異なるため、入念に確認しておきましょう。

テイクアウト用の備品類

テイクアウトに対応するための備品類も準備します。また、提供する商品にあわせて容器の形状やサイズなど変える必要があります。

お客様の購入や飲食、廃棄といったシーンをイメージして事前に準備しましょう。また、スプーンや割りばし、おしぼり、持ち帰り用の袋なども必要となるため、合わせて準備してみてください。

テイクアウト導入を知らせる旗など

テイクアウトを始めたことを知らせるためのツールも必要です。例えば、チラシやポスター、看板、旗などはテイクアウト導入を知らせる有効な方法の1つです。

これらのツールは、インターネットを利用したアピールだけでは訴求できない通行人や高齢者といった層にも導入を知ってもらうきっかけとなります。

テイクアウト設備の導入に助成金を活用しよう

営業する地域の自治体や地方公共団体によっては、テイクアウト導入を助成金や補助金によって支援しています。いずれも、原則で返済不要なので、利用条件を満たす場合は積極的に活用したいところです。

助成金や補助金の種類によっては、得られた利益の一部を返還する必要があります。活用の際は、要項の詳しい内容について個別で確認しましょう。実際に検討する場合は、営業する地域の自治体や地方公共団体の情報を調査してみてください。

参考:業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)事業 | 事業 | 東京都中小企業振興公社
(東京都中小企業振興公社「業態転換支援」22年6月30日まで募集)

参考:テイクアウト・宅配等を始める方への支援(第234報)|東京都
(東京都「業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)」22年11月25日まで募集)

まとめ

販売する商品によって必要な許可や資格が変わるテイクアウトの導入は、販売方法によって用意すべき設備が異なります。そのため、低コストでの開業を魅力に感じていたものの、思ったよりも導入コストが膨らむというケースも考えられます。

また、設備以外にも営業許可や備品類、訴求ツールなども事前に用意する必要があります。そこで、テイクアウト設備の導入は原則で返済不要で費用を得られる補助金や助成金の活用がおすすめです。

補助金や助成金の活用なども視野に入れながら、リスクを抑えたテイクアウト導入を目指してみてください。

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