スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末の普及に伴って、商品やサービスの購入にモバイル決済も利用されています。様々なサービスがある中で、自分の生活や購買行動に合った物を選ぶためには、事前にモバイル決済についてよく知っておくことが大切です。
そこで今回は、モバイル決済の仕組みや種類、選び方や注意点などを詳しく紹介していきます。
目次
モバイル決済の仕組みとは?
モバイル決済とは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を用いて決済を行う仕組みを指します。現金を用いて決済をするのではなく、自身のモバイルにあらかじめ入金(チャージ)したり、クレジットカード情報を入力したりすることで、モバイルを通じて決済を行うことができます。
経済産業省の商務・サービスグループキャッシュレス推進室が2021年8月に公開した「2021年度第1回 キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会」の資料によると、政府では、国内において現金を使わずに決済を行うキャッシュレス決済の比率を2018年の29.7%から、2025年6月には40%程度に引き上げることを目指すとしています。キャッシュレス決済の手段のひとつとして、モバイル決済は今後ますます日常的になる可能性があります。
参考:2021年度第1回 キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会(METI/経済産業省)(資料4事務局説明資料)
モバイル決済の2つの種類とは?
モバイル決済には「非接触型IC決済」と「QRコード決済」の2種類があります。それぞれの意味の解説と、現在利用されているものにはどのようなサービスがあるかをあわせて紹介していきます。
非接触型IC決済:Apple PayやGoogle Payなど
「非接触型IC決済」とは、スマートフォンやクレジットカードなどを決済用端末にかざすだけという、接触せずに決済を完了できる決済方法です。この方法には国際標準規格の「NFC」と呼ばれる近距離無線通信の技術と日本独自の技術「FeliCa」という通信規格が用いられています。
非接触型IC決済のモバイル決済には、iPhoneで利用できるApple Payと、Androidのスマートフォンで利用できるGoogle Pay、docomo独自の決済サービスであるおサイフケータイがあります。それぞれクレジットカードや電子マネー、Suicaなどの交通系ICカードとも紐付けできるため、スマートフォンを持ち歩くだけでさまざまな決済ができます。
QRコード決済:LINE PayやPayPayなど
QRコード決済には、モバイルに搭載したアプリに表示されるバーコードをお店側が読み取ることで決済が行える方法と、店頭にあるQRコードを自身がモバイルで読み取って決済を行う方法とがあります。
QRコード決済の主なものには、PayPay、楽天ペイ、LINEPay、d払いなどがあげられます。自分でアプリをダウンロードして登録するだけで利用を始めることができ、お店側もQRコードを用意するだけなので導入しやすい点が特徴です。
モバイル決済は自分に適した決済方法で選ぶ
モバイル決済には「前払い」「即時払い」「後払い」の3種類の決済方法があります。それぞれ特徴やメリット・デメリットがあるため、自分で管理しやすい方法を選ぶことがおすすめです。ここではそれぞれの特徴を紹介します。
プリペイド方式の「前払い」
「前払い(プリペイド)」の方法の場合は、モバイルアプリにあらかじめお金を入金(チャージ)しておき、支払いをします。入金した分の金額以上は利用できないため、自身の無駄な買い物を防ぎ、不正利用された場合にも入金した金額以上は使用されることはないというのメリットと言えます。
前払いを行うモバイル決済サービスとしては、モバイルSuica、楽天Edy、LINE Pay、PayPayなどがあげられます。
口座引き落としなら「即時払い」
「即時払い」は、商品・サービスの購入と同時に自身の銀行口座からその購入代金が引き落とされる仕組みです。モバイル決済以外にデビットカードが即時払いの代表的なものとしてあげられます。
銀行口座に入っている以上の金額は利用できないためお金の使いすぎを防げる点は前払いと同様ですが、前払いとは異なり入金する手間もないというところはメリットと言えるでしょう。
即時払いを行うモバイル決済サービスには、ゆうちょPay、みずほ銀行のJ-Coin Payがあります。
クレジットカード利用の「後払い」
モバイル決済のアプリと自身の持つクレジットカードを紐づけることで、1カ月分の利用金額をまとめて銀行口座から引き落とすタイプの決済方法です。商品・サービスの購入だけでなく、スマートフォンの電話料金のキャリア決済も後払いのひとつです。
クレジットカードそのものでの決済時にはレジでサインの記入や暗証番号の入力が必要ですが、モバイル決済時にはそれらが不要なので手間がかかりません。
後払いを行うモバイル決済サービスには、iD、QUICPay、楽天ペイ、d払いなどがあります。
モバイル決済のメリット3つ
- ATMで現金をおろす手間がいらない
- 財布を持たなくてもいいので荷物が減る
- 決済サービスに登録していない店では使えない
持ち歩いているモバイル端末で利用できるモバイル決済のメリットにはどのようなものがあるか、主に3つを紹介します。
1.ATMで現金をおろす手間がいらない
現金を用いて商品・サービスの購入を行う場合、財布の現金が足りずに購入できなかったということが想定されます。一方モバイル決済を利用する場合は、その都度財布の中身を気にすることなく、土日のATM利用で追加される手数料をとられずに済むという点がメリットです。
2.財布を持たなくてもいいので荷物が減る
紙幣やおつりでたまった小銭が詰まった財布はバッグの中でかさばることもあります。現金を持たずにモバイル決済を活用すれば、少しの買い物でもその都度財布を持ち歩かなくてはならないという手間がなくなります。
3.ポイント還元やキャッシュバックが魅力
モバイル決済のアプリでは決済金額に応じてキャッシュバックやポイントの付与が行われ、その貯まったポイントで商品・サービスの購入ができます。アプリによっては期間限定でポイント還元率をアップするキャンペーンが行われており、複数のアプリを使い分けてポイントをより多く集める「ポイ活」という使い方も人気となっています。
モバイル決済のデメリット3つ
- 不正利用が懸念される
- スマホの電源が切れると決済できない
- 決済サービスに登録していない店では使えない
モバイル決済は導入も利用も手軽に行えますが、注意が必要な点もあります。ここではモバイル決済のデメリットとして3つ紹介します。
1.不正利用が懸念される
モバイル決済は現在さまざまなセキュリティ対策がなされているものの、モバイル端末そのものを紛失した場合、モバイルのロック設定がされていないと不正利用される恐れがあります。特に、モバイル決済においてクレジットカードを紐づけている場合は限度なく利用されてしまうため注意が必要です。
また、悪質なメールを送信し個人情報を盗み取るサイトへ誘導するフィッシング詐欺や、店舗に貼ってあるQRコードを差し替えて店舗の売上を盗み取るという事件例もあるため、気軽に使えるモバイル決済だからこそ、より一層の自衛策は施す必要があります。
2.スマホの電源が切れると決済できない
モバイル決済は、スマートフォンの電源が切れてしまえば決済を行うことはできません。電源が切れるだけでなく、現在地が圏外だった場合も同様です。充電の確保や利用する地域の電波状況の確認が必要です。なお、おサイフケータイでの決済においては、電源が入っていなくても利用が可能です。
3.決済サービスに登録していない店では使えない
モバイル決済を利用する場合には、利用したい店舗がモバイル決済サービスを行っているかの確認が必要です。訪れた店舗がモバイル決済サービスを行っておらず、自身が現金やその他の決済手段を持ちあわせていなければ、その店舗での利用ができなくなってしまうので、入店前に確認しておきましょう。
モバイル決済を使う際に気をつけたい注意点3つ
- スマホを紛失した時の対処を確認しておく
- アップデートしてセキュリティを最新にしておく
- 不正利用された時の補償があるか確認しておく
モバイル決済を便利に利用するために、どのようなことに気をつけておけばよいのでしょうか。最後に、モバイル決済を便利に利用するための注意点を3つ紹介します。
1.スマホを紛失した時の対処を確認しておく
先にも説明したように、モバイル決済で特に気をつけたいのは悪質な不正利用です。端末をかざすだけで決済が完了してしまうモバイル決済の場合、モバイル端末にロックがかかっていなければ簡単に不正利用できてしまいます。必ず暗証番号やパスワード登録を行い、他人が簡単にロック解除して利用することのないように厳重に管理しましょう。
万が一モバイル端末を紛失してしまった場合は、モバイル決済に紐づけているクレジットカードの利用を停止するなどの対策や、各サービスの相談窓口もあわせて調べておきましょう。
2.アップデートしてセキュリティを最新にしておく
モバイル端末紛失時の不正利用だけでなく、端末自体のセキュリティが万全でないために不正アクセスされる可能性も考えられます。
モバイル端末やモバイル決済アプリを常に最新に保てるようにアップデートをこまめに行い、セキュリティを強固にしておきましょう。
3.不正利用された時の補償があるか確認しておく
各サービスでは損害に対する補償体制を打ち出している企業があります。
PayPayでは、不正利用から60日以内にPayPayと警察に知らせるなどで、原則全額補償するとしています。心あたりのない利用などに対する申請フォームも用意されています。
d払いでは、不正利用による損害を確認した場合、直ちにドコモおよび警察に連絡し、その他の条件を満たすことで全額補償としています。
楽天ペイでは、楽天ペイからの身に覚えのない請求や、楽天ペイアプリで身に覚えのない利用がされていた場合、補償など個別にカスタマーデスクダイヤルで対応しています。また、2020年に楽天ペイ利用規約へ不正利用時の補償に関する特約が追加されました。
他にも各サービスでどのような補償が用意されているか、自身の利用するモバイル決済サービスを確認してみましょう。
(2022年5月時点)
参考:補償申請について – PayPay ヘルプ
参考:d払い等の不正被害の補償について|d払い / ドコモ払い
参考:楽天ペイアプリから身に覚えのない請求がきました。 – 楽天ペイアプリ: よくあるご質問
参考:「楽天ペイ不正利用時の補償に関する特約追加」のお知らせ – 楽天ぺイアプリ
まとめ
今回は、モバイル決済の仕組みや種類、メリットやデメリットについて紹介しました。
普段から持ち歩くスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末で、商品・サービスの購入もまとめて行えるモバイル決済サービスは、現金を銀行口座から下ろす手間や時間に煩わされることがありません。自身のお金の使い方にあわせて前払い、即時払い、後払いから選べるので、お金の無駄遣いや不要な買い物を防ぐこともできます。
一方、便利で手軽であるためにモバイル端末を紛失した際や悪質なフィッシング詐欺などには注意が必要です。セキュリティを強固にし、万が一紛失した場合の連絡手段なども事前に確認しておくとよいでしょう。
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