商品・サービスの提供を行う企業や店舗にとって、顧客を購買まで促すための「販促」「マーケティング」という手段は重要な要素です。しかし、この二つのキーワードをどのような場面でどのように使いわけるのか、混同してしまうこともあるのではないでしょうか。

今回は販促とマーケティングの言葉の違いを解説し、顧客獲得や商品・サービス購入へとつながる施策アイデアを紹介していきます。

販促とマーケティングの違い

販促とマーケティングの二つの言葉は、時として同じような意味合いで使用されていることもあり、それぞれの定義の認識が曖昧であるという方もいるのではないでしょうか。まずは販促とマーケティングの違いについて正しく押さえておきましょう。

販促(販売促進)とは

販促とは、「販売促進」の略語であり、商品・サービスの販売側が顧客側に購買意欲を促し、購入へ結びつけるためのさまざまな活動のことを指します。商品・サービスそのものや販売方法に対して工夫する活動といえます。

英語ではセールスプロモーションとも呼ばれ、その手法やツールは多々あります。

マーケティングとは

マーケティングとは、顧客のニーズを探り、商品・サービスが売れる仕組みづくりをすることです。商品やサービスの企画・開発から、認知や集客、そして顧客へ売り込むまでの一連の流れが全てマーケティングに含まれます。SNSなどでの情報発信もマーケティングの一部といえるでしょう。

こうして見ると、「販促はマーケティングの一部である」と言えます。ただし、販促が商品やサービスを主体にした考え方であるのに対し、マーケティングは顧客や仕組み全体を主体とした考え方と捉えることができます。

販売促進活動の目的

販売促進活動においては、先述の通り「顧客の購買意欲を促す」という点が大きな目的になりますが、その一連の流れの中で、商品やサービスの認知拡大を行うという点も目的の1つになり得ます。そもそも顧客に購買意欲を促すためには、まず先に商品やサービスについて知ってもらう必要があるためです。

そして、さまざまな商品やサービスがあふれている中で選ばれるためには、顧客に認知してもらったうえでさらに、「自分にとって良い商品である」「悩みや課題を解決してくれそう」と価値を見出してもらう必要があります。

そのため、販売促進活動を行ううえでは、既に自社商品やサービスを知っている顧客に売り込むことももちろんですが、まだ過去に利用したことがない新規顧客へのアプローチも含めた取り組みになることもあります。

顧客・消費者の視点に立つことが重要

さきほど、マーケティングでは顧客を主体とした考え方であると紹介しましたが、具体的にいえば、「顧客・消費者の視点に立つためにマーケティングが必要である」と言えます。

マーケティング戦略の原則と呼ばれるものに「4C」という考え方があります。4Cとは、顧客が商品・サービスを理解して購買へつながるまでの4つの要素のことを指し、下記の4つの単語の頭文字をとって4Cと呼ばれています。

  • 「顧客価値(Customer Value)」
  • 「顧客コスト(Customer Cost)」
  • 「顧客にとっての利便性(Convenience)」
  • 「コミュニケーション(Communication)」

「顧客価値(Customer Value)」とは、顧客が商品・サービスに抱くイメージや性能などの価値を指します。「顧客コスト(Customer Cost)」は顧客が商品・サービスに支払う費用であり、価値に対して顧客がいくら支払えるかという価格を指します。「顧客にとっての利便性(Convenience)」は、顧客が商品・サービスを入手するまでの手段は適切で便利であるかを考えます。決済方法や販売方法がそれにあたります。最後の「コミュニケーション(Communication)」とは、どのような形で顧客と有効的なコミュニケーションを図るかということを指します。

これらの4Cをもとに顧客・消費者の視点で自社商品やサービスの分析を行うことが重要になります。

一方で、顧客・消費者の視点ではなく売り手側視点で必要とされる「4P」という概念もあります。4Pとは、「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(プロモーション)」の頭文字をとったものです。売り手として必要な考え方のため、1つでも無視してしまうと、販促に関わらずその商品やサービスに関わる仕組み全体において欠陥が生じてしまう可能性があります。

販促の施策アイデア・事例

商品・サービスを知ってもらうための販促の施策にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは販促の施策アイデア・事例を紹介します。

販促の施策アイデア・事例
  • 販促物を使う
  • 展示会・イベントを行う

販促物を使う

商品・サービスを顧客に知ってもらうための手段として主に考えられるのは、販促物の利用です。ここでは主にチラシと旗・POPについて紹介します。

チラシ

チラシは、新聞折込や街頭での配布、各家庭のポストに投函するポスティングなど、従来から行われている販促物です。なかでもポスティングは、業者に依頼するだけでなく、チラシの作成から配布までを独自で行うことも可能なため、比較的すぐに取り組みやすい手段といえるでしょう。

チラシは商品・サービスの周知だけでなく、割引特典などのクーポンをあわせて配ることで、配布した枚数からどのくらいの人数がチラシを見て利用したかといった効果測定を行うこともできます。

旗・POP

旗は、店舗入り口や駐車スペースなどに設置することで店舗の存在を周知させる販促物です。それまで店舗の存在を知らなかった通行人に対しても発信することができるため、新規顧客獲得にも有効です。道路沿いに設置することが多い場合には、遠くを歩く人や車を運転する人にも見えるような色使いや文字数にすると目に留まる効果が期待できます。

POPは、店頭や商品棚に設置することで目にすることができる販促物です。店舗に入ったものの、まだ購入までは至らない顧客に対して背中を押す役割であるといえます。購買意欲を後押しするようなキャッチコピーを用いて顧客に直接アピールするとよいでしょう。

展示会・イベントを行う

販促は、紙媒体を使って行う手法だけでなく、展示会などのイベントを通じて行うこともできます。会場やブースで、商品のサンプリング配布を行ったり、サービスの体験を行ったりすることで、顧客と直接コミュニケーションを取って購入や利用を促します。

自社で開催するイベントや、何十社も集まって大型展示場で行われるような展示会に参加するなど、展示会・イベントの種類や方法はさまざまです。

自社で行う場合は自ら会場を設けて開催するため、イベントの存在を知ってもらうこと自体が商品やサービス、企業や店舗の認知に繋がります。また、店内や店頭で行うイベントの場合は、別途会場を用意しなくて済むため、通行人やたまたま来店した人へのアプローチも可能になるでしょう。

マーケティングの施策アイデア・事例

商品・サービスの価値を顧客へ売り込むにあたって、WEB広告やSNSなどのインターネットを活用した情報発信も有効です。ここではマーケティング施策としてのアイデアを紹介します。

マーケティングの施策アイデア・事例
  • WEB広告を出す
  • インターネットを活用する

WEB広告を出す

「WEB広告を出す」とは、インターネット上に広告を出稿することを指します。WEB広告には、Yahoo!やGoogleといった検索エンジンの検索結果に広告を表示するリスティング広告や、アフェリエイターと呼ばれる人のブログなどに自社の商品・サービスの紹介を掲載するアフェリエイト広告、自社サイトを一度訪問したユーザーにあとから追っかけで広告発信を行うリターゲティング(リマーケティング)広告などがあります。

WEB広告はターゲットを絞って出稿できることが特徴のひとつであり、条件を年齢や性別、地域など細かく絞ることができることから、商品・サービスにマッチした顧客へ発信することができます。また、WEB広告で得られたデータを分析してその他のさまざまな施策に活用できることもメリットです。

インターネットを活用する

ここで紹介するインターネットの活用とは、自社サイトやSNSのアカウントなどを開設することが前提になります。ある程度の知識は必要となりますが、日常的にインターネットで情報収集が行われている現代において、インターネットの活用はマーケティング施策として有効的であるといえるでしょう。

ホームページ・オウンドメディア

自社のホームページや、自社発信のメディアを持つことで、他社の広告サービスよりも制約がない状態でさまざまな発信を行うことができます。商品・サービスの紹介だけでなく、企業理念や企業の生い立ち、商品開発までの想いを掲載することで、どのような企業が商品・サービスを提供しているかということがわかり、顧客に直接魅力を伝えることができます。

また、自社でサイト運営することで、他社の広告サービスよりもコストを抑えることができ、自社ブログはコツコツと続けることでブログそのものが財産となるため、長期的にマーケティングを行う場合には実効性のある手段といえます。

SNS

X(旧Twitter)やInstagram、LINEといったSNSは日常的に利用されています。さまざまな情報がリアルタイムで次々と更新されるため、常に最新情報を知りたいというユーザーにとっては利用しやすい手段であり、発信側にとってもリアルタイムで反響を得られる有効な場といえるでしょう。マーケティング施策としては、お得情報やセール情報などの最新情報を定期的に発信することができ、顧客とのコミュニケーションを図ることも可能なため、タイムリーな情報発信や密接な顧客関係の構築に繋げられます。

また、SNSを用いた販促という点では、インフルエンサーなどの第三者を通じて商品・サービスを紹介してもらう方法もあります。自社の人物ではない、第三者の目線で商品やサービスの魅力を発信してもらうことで、顧客や消費者により近い声を届けることができます。

まとめ

今回は、販促とマーケティングの違い、それぞれの効果的な施策について紹介しました。

まずは販促とマーケティングにおける意味や視点の違いを理解し、自社にはどのような取り組みが適しているのかを考えていくことが大切です。チラシや旗といった販促物を用いる方法だけでなく、顧客体験型のイベントを実施したり、情報収集手段としてさまざまな人々が活用するインターネットを用いたりするなど、今回紹介した内容も参考に検討してみてください。

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