弁当屋は、地域や年齢などを問わず幅広く利用されており、店舗もさまざまに存在しています。弁当屋を開業したいと考えたとき、どのようなことに注意しておく必要があるのでしょうか。今回は、弁当屋の開業にあたって、開業費用やその資金の調達方法などを詳しく紹介します。

弁当屋の3つの業態とかかる費用

弁当屋とひとことで言っても、業態には種類があり、それによって費用も異なります。ここでは、弁当屋にはどのような業態があるのかを説明します。

弁当屋の3つの業態
  • 弁当屋の種類1:店舗型
  • 弁当屋の種類2:宅配・デリバリー型
  • 弁当屋の種類3:移動販売・キッチンカー型

弁当屋の種類1:店舗型

チェーン店で多く見られる店舗型は、店頭でお弁当を詰めて販売する業態です。店舗の立地によって反響が大きく異なるため、開業前に人通りや交通量などの周辺の市場調査が必要です。その地域のニーズや環境にぴったりと合っていれば、集客が期待できるでしょう。繁盛を目指すには条件のよい立地に出店しなければならないため、家賃は高めになることがあります。

店舗型の弁当屋を開店するには、店舗の規模や場所によって300万〜1200万円程度の資金が必要です。費用を抑えたいという場合には居抜き物件や中古の厨房設備の活用を検討するとよいでしょう。

参考:開業しやすい弁当屋!必要な資格や開業資金は?成功の秘訣を解説 | フランチャイズWEBリポート
参考:弁当屋さんを開業するには?必要な資格や許可、失敗を避けるポイントを解説 – STORES Magazine

弁当屋の種類2:宅配・デリバリー型

宅配型は、店舗を持たず、注文ごとにお弁当を作って配達するという業態です。先に紹介した店舗型とは異なり、店舗を持たない分だけ費用を抑えられるのがポイントです。顧客のニーズにマッチしていれば、一回限りの注文ではなく長期的に利用してもらえる可能性も考えられます。

店舗を持たないことで家賃分が節約できる反面、出店したことを認知されにくく、集客のための広告宣伝費用が必要になる場合もあります。

宅配型の場合の開店資金は相場として500万〜900万円程度です。店舗がない分、物件に関する費用は不要ですが、配達用の車やバイクが必要になります。車であれば200万円程度、バイクはリースが月に1万円程度、購入であれば50万円程度と考えるとよいでしょう。

参考:開業しやすい弁当屋!必要な資格や開業資金は?成功の秘訣を解説 | フランチャイズWEBリポート
参考:弁当屋さんを開業するには?必要な資格や許可、失敗を避けるポイントを解説 – STORES Magazine

弁当屋の種類3:移動販売・キッチンカー型

キッチンカー型とは、移動販売車でオフィス近くの広場やイベント会場などに展開し、お弁当の販売を行う業態です。店舗を持たない宅配型よりもさらに初期費用を低く抑えられ、出店を始めた場所で集客が期待できなければ別の場所に移って出店するということが可能なので、立地の心配の必要がありません。

ただし、好条件の場所をみつけても、すでに競合店がいる場合もあり、理想の場所を探すのが意外と容易ではないこともあります。

キッチンカー型の場合、移動販売車の程度や設備内容によって100万〜900万円程度の開業資金が必要になります。こちらも、車両や設備を中古で賄うことでさらに安価に抑えることも可能です。

参考:開業しやすい弁当屋!必要な資格や開業資金は?成功の秘訣を解説 | フランチャイズWEBリポート
参考:弁当屋さんを開業するには?必要な資格や許可、失敗を避けるポイントを解説 – STORES Magazine

キッチンカーのような移動販売店の開業方法や基礎知識についてはこちらの記事で紹介しています。

移動販売店の基本知識を解説|起業に必要なものやメリットも紹介

弁当屋の開業資金を調達する方法

小規模で始められる弁当屋であっても、開業資金は必要です。手持ちだけで開業にかかるすべての費用を賄えない場合、「融資を受ける」か「助成金や補助金を活用する」などして資金調達をすることも検討しましょう。

融資については、主に銀行や日本政策金融公庫で受けられます。銀行から融資を受ける場合は、信用保証協会を利用できます。一方の日本政策金融公庫は、国が100%出資している公的な金融機関です。日本政策金融公庫で融資を受けるには以下の条件があります。

新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方
引用:新規開業資金|日本政策金融公庫

新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方に限られます。
引用:新規開業資金|日本政策金融公庫

また、融資を受けようとするには創業計画書の提出も必要になります。

助成金や補助金については、国や地方自治体が小規模事業者を対象に行っている制度などを活用することができます。たとえば、「再就職手当」は雇用保険に加入していて失業状態の人が、次の仕事が決まった際に状況に応じて支給される手当になります。「小規模事業者持続化補助金」はサービス業や小売業などの小規模事業者の販路拡大のための制度で、既存の商品・サービスを販売するための経費や宣伝のための制作費、商品開発の材料費などさまざまなものが対象となります。また、「創業者支援事業補助金」は、創業時に必要となる費用について、国や地方自治体が一部補助を行うという制度です。

それぞれ条件などはありますが、うまく活用すれば開業費用の負担を減らせることが期待できます。ただし、各自治体によって実施の有無が異なる場合や、制度の名称や詳細が変更されるケースもあるので、必ず必要なタイミングで事前に各自治体に確認してみましょう。

弁当屋の開業に必要な資格や届出

弁当屋を開業するにあたって、どのような資格や届出が必要か、主なものを説明します。

弁当屋の開業に必要な資格・届出
  • 資格や届出1:飲食店営業許可
  • 資格や届出2:食品衛生責任者
  • 資格や届出3:火を使用する設備等の設置届
  • 資格や届出4:開業届
  • 自宅や車での弁当販売に必要な資格・届出

資格や届出1:飲食店営業許可

店舗型、宅配型、キッチンカー型いずれの業態においても、弁当屋を開業する際には保健所への飲食店営業許可の申請が必要です。申請後に保健所の審査があり、店舗の設備や調理場のチェックが行われます。審査に通り許可が下りるまでに2週間程度の日数がかかるため、審査に向けての店舗の設置なども含めてあらかじめスケジュールを確保しておきましょう。

申請手続きの詳細は自治体によって異なることがあるため、管轄地域の保健所に事前に相談するのがおすすめです。

資格や届出2:食品衛生責任者

食品営業許可施設および食品営業届出施設の営業者は、食品衛生法第51条に基づく「公衆衛生上必要な基準」によって、食品衛生責任者を選任することが定められています。

食品衛生責任者は、都道府県知事などが行っている講習会を受講することで取得が可能です。1日の講習で費用は1万円程度になります。調理師や栄養士などの資格をすでに所持している場合は講習を受けずに食品衛生責任者として選任できます。

参考:食品衛生責任者養成講習会|一般社団法人東京都食品衛生協会

資格や届出3:火を使用する設備等の設置届

厨房設備や給湯湯沸設備など、火を使う設備を設置する場合には、管轄の消防署への届け出が必要です。施設の配置図や設計図などが必要となるため、あらかじめ確認してみるとよいでしょう。

参考:東京消防庁<申請様式><火を使用する設備等の設置(変更)届出書>

資格や届出4:開業届

弁当屋開業日から1カ月以内に、所轄の税務署あてに開業届を提出します。開業届は必ず申請が必要というものではありませんが、開業届とあわせて青色申告の手続きを行い、確定申告で青色申告をすると特別控除を受けられます。さらに、屋号付きで開業届を提出すると、屋号での銀行口座を開設することが可能になるため、私用の通帳と事業用の通帳を分けることができ、確定申告や帳簿付けの作成を簡素化できます。

また、先に紹介した再就職手当を受けようとしている場合には、失業状態であることが前提であるため、開業届の提出は失業保険の給付開始後にするのがおすすめです。

自宅や車での弁当販売に必要な資格・届出

自宅を店舗として弁当屋を開業する場合には、飲食店営業許可を受けるための厨房設備の基準に達している必要があります。水洗いができる床であることや、店舗と住居が仕切られていることなどの条件があるため、新たに自宅で開業する際にはリフォームしなければならないことも考慮しましょう。

また、キッチンカー型を検討している場合には、自動車免許の取得はもちろんのこと、道路上での販売の場合には、警察から道路使用許可を得る必要があることも覚えておきましょう。ちなみに道路使用許可に必要な書類は下記のとおりです。

  • 道路使用許可申請書(2通)
  • 道路使用の場所又は区間の付近の見取り図
  • 道路使用の方法又は形態等を補足するために公安委員会が必要と認めて定めた書類

参考:道路使用許可の概要、申請手続等|警察庁Webサイト

弁当屋の開業を失敗させないためのノウハウ

決意を持って開業した弁当屋だからこそ、失敗だけは避けたいものです。最後に、弁当屋の開業を失敗させないためのノウハウを紹介します。

弁当屋の開業を失敗させないためのノウハウ
  • 弁当屋のコンセプトを明確にする
  • 弁当を販売しやすい立地を探す
  • 独自の弁当メニューを作る
  • ターゲットや顧客に合わせた弁当の価格設定をする
  • 弁当屋の宣伝にも力を入れる
  • 弁当屋で使えるキャッシュレス決済を導入する

弁当屋のコンセプトを明確にする

弁当屋を開業するにあたって、まず重要なのがお店のコンセプトを明確にすることです。どのようなお弁当やサービスをどのように提供するのかを定めて、メニューからお店の営業スタイルまでを細かく考えていきましょう。自分のお店ならではの独自のコンセプトを作ることができれば、競合との差別化を図れたり、顧客にとってより印象的なお店になれたりする可能性があります。

なお、自分でコンセプトを作り上げるのが難しい場合には、フランチャイズへ加盟することも1つの選択肢になります。すでにメニューやコンセプトが決まっているので、スムーズな開業に繋げられるでしょう。

弁当を販売しやすい立地を探す

販売しやすい、つまり集客を得られやすい立地であることは弁当屋にとって重要です。自身の弁当屋がどのようなコンセプトであるかによっても最適な立地は異なります。例えば、ボリューム重視の弁当屋であるか、ヘルシーさを売りにした弁当屋であるか、ということでもターゲットに認知されやすい立地は異なってくるでしょう。

また、日頃の交通量や人通りについては、実際に現地に出向いてみるのがおすすめです。店舗型をオフィス街に出店する場合であれば、オフィス街の休日にあたる土日祝日の人通りがどの程度で集客にどのように影響が出るかなど、実際に現地で確認しなければわからないものです。

また、検討している地域にどの程度の競合店があるかも確認して、どの程度の集客が見込めるかも調査してみましょう。

立地について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてお読みください。

飲食店は立地がすべて?|立地の種類や特徴、立地調査の方法を紹介

独自の弁当メニューを作る

競合店が多い地域や、飲食店が多数連なる場所の場合、他店と似通ったメニューを提供しては、目指す集客を得ることは難しいでしょう。自身の弁当屋でなければ食べられないような、自店の目玉商品となるようなメニュー開発を行いましょう。その際は、立地やターゲット設定にあわせたメニューであることもポイントになります。

こちらの記事では、メニューの開発手順について解説しています。

メニュー開発の手順|メニュー開発の手順や重要なポイント

ターゲットや顧客に合わせた弁当の価格設定をする

ターゲットとしている客層がどのような年代であるかによって、価格設定は変わってきます。たとえば、学生をメインターゲットとしているにもかかわらず、高価格帯のお弁当で販売していては、購入のハードルが高くなってしまう可能性があるでしょう。学生をターゲットとしたお弁当なのであれば、ボリューミーで低価格の設定にし、オフィス街で働く人をターゲットとするのであれば、ボリュームを抑えて学生向けのものよりも価格をアップするなど、客層にあわせて適切だと思われる価格や分量の設定をしましょう。

なお、価格は一度決めたら終わりではなく、周辺環境やターゲット層の変化などにあわせて適宜見直していく必要があります。お店の営業をしながら、どのような顧客がどのようなメニューを選んでいるかなどもデータとして集計し、より適切な価格設定を常に目指していきましょう。

また、価格設定は問題無く利益が得られるようにすることも大切です。食材費はもちろん、人件費や物件費、設備費などの諸費用とのバランスを考えつつ、ターゲット層に満足してもらえるような価格・内容を考えましょう。

弁当屋の宣伝にも力を入れる

近隣住民に対して店舗の開店を知らせる宣伝活動も力を入れて行いましょう。チラシのポスティングや新聞広告などの紙媒体での宣伝だけでなく、SNSの活用やホームページの作成など、さまざまな年齢層に知られるために、紙とウェブの両方を活用することがポイントです。また、お弁当を購入する客層は近隣住民や近隣で働く人々がメインとなるため、周辺地域に絞ったポスティングや宣伝活動を行うとよいでしょう。

また、実際に来店した客層に向けてポイントカードの発行やクーポンを配布したり、通りすがりの人々の目に留まるように立て看板や店頭幕を設置したりするなど、リピーター獲得や認知度向上を目指すことも重要です。

飲食店における集客方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

集客にお悩みのレストラン・飲食店必見|低コストで活用できる集客ツール&アイディア

弁当屋で使えるキャッシュレス決済を導入する

決済手段の豊富さも飲食店の成功に影響する大事な要素の1つです。現代では現金以外に、クレジットカードや電子マネー、決済アプリ、交通系ICカードなど多種多様な決済手段が存在し、それぞれに多くの利用者がいます。ポイントや特典などの恩恵を得られることから積極的にキャッシュレス決済を使いたいと考えている人や、日頃からあまり現金を持ち歩かないようにしている人もいるため、キャッシュレス決済手段への対応の有無が直接、顧客の獲得機会の損失につながる場合もあります。

キャッシュレス決済に対応するには専用の設備を整えたり契約をしたりする必要がありますが、ターゲット層やサービス内容によってどの決済サービスに対応しておくべきかは異なります。広く浸透しているものや自分のお店の客層と一致しているものなどをもとに、導入すべきキャッシュレス決済手段を考えましょう。

キャッシュレス決済の導入に関するメリットや課題はこちらで詳しくまとめています。

キャッシュレス決済を経営に導入するのはおすすめ?導入時のメリットと課題についてご紹介

まとめ

今回は、弁当屋を開業するにあたって、主な業態の説明と、必要な開業資金や届け出などについて紹介しました。

弁当屋の業態としては主に、店舗型、宅配型、キッチンカー型の3種類があり、店舗の有無や厨房設備によって必要な開業資金は大きく異なります。

また、店舗を持たない弁当屋であっても、飲食店営業許可だけではなくさまざまな届け出や資格が必要です。各自治体によって内容が異なる場合もあるので、開業を予定している地域の各事業所に最新情報を確認しておきましょう。

せっかく決意した弁当屋開業を失敗に終わらせないためには、メニュー開発やターゲット設定、広告宣伝などさまざまな努力も重要です。自身の弁当屋でしか味わえないオリジナルメニューを作って、多くの反響を得られる弁当屋を目指してみてはいかがでしょうか。

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