飲食業界で働く人であれば、将来は自分の飲食店を持ちたいという人は多いでしょう。
経営者になれば、素材や調理法にこだわった料理や、それぞれの理想とする空間を提供できるのが根強い人気の理由です。さらに店の商品に人気が出たり、テレビやSNSで話題になったりすると収入が大幅にアップするため、成功すれば年収1000万円以上も夢ではないと言われています。
今回は、どうすれば飲食店の経営で年収1000万円以上を達成することができるのか、達成するためのノウハウについて解説していきます。
目次
飲食店経営者の平均年収
飲食店経営者の平均年収は、個人経営の場合およそ560万円~620万円といわれています。
飲食店経営の平均年収:560 万円~627 万円(経済専門誌・口コミ調べ)
引用:飲食店経営者の年収をレストラン・バー・居酒屋別(業態別)で徹底解説します!
サラリーマンの平均年収約443万円よりは高いものの、店の家賃、光熱費や食材のコストなどにかかる費用は膨大なものになります。個人経営の場合、単純に計算したとしても人件費や光熱費、それに店舗の賃料を加えるとほぼ毎月100万円以上がランニングコストとしてかかります。
また、同じ飲食店でも業態やジャンルによって年収は大きく変わります。店舗のサイズや数などの事業規模によっても差があるため一概には言えませんが、目安として以下のような収入の幅があります。
居酒屋 | 300万円〜2500万円程度 |
レストラン | 400万円〜600万円程度 |
カフェ | 200万円〜1000万円程度 |
ラーメン店 | 800万円程度 |
定食屋 | 200万円~300万円程度 |
バー | 200万円~300万円程度 |
業態によっては桁が変わるほど年収に幅がある場合もあれば、同じ業態内ではそこまで大きな差がないようなケースもあります。どのような飲食店をイメージしているかによって、得られるであろう年収が変わるで、予め目安を把握しておくとよいでしょう。
参考:令和3年分 民間給与実態統計調査|国税庁
参考:飲食店経営者の平均年収とは? | 高年収・高収入を目指す方法を解説 | KitchenBASE
参考:飲食店オーナーの年収の目安や取り分は?年収を上げる7つの方法 – 飲食店の開業資金/融資・経営サポートならFOODGYM(フードジム)
飲食店経営が難しい理由とは
- 競争相手が多い
- 売上が安定しにくい
- 料理が美味しければ繁盛するとは限らない
飲食店は、出店率も高ければ廃業率も高い業界と言われています。チャレンジする人が多い一方で、廃業に追い込まれる人も数多くいるということです。飲食店の経営が難しいといわれている理由を具体的に3つ説明します。
競争相手が多い
飲食店経営が難しいといわれる理由の一つは、競争相手の多さです。飲食店は、最低限の営業許可や資格さえあれば誰でも簡単に始めることができます。しかし日々多くの店舗が開店と閉店を繰り返し、市場の競争は激化しています。
エリアごとに顧客の数がある程度限られてくるため、その顧客を多くの店で取り合う状態となり利益を出すことが難しくなってしまうのです。また、近隣に同じジャンルの飲食店が何店舗も存在すると、集客がうまくいかず利益を上げることが一層難しくなります。
売上が安定しにくい
飲食店は、店舗の家賃や光熱費、食材の仕入れなどの固定費が毎月発生します。しかし売上は、その月の気候や流行などによって大きく左右されます。台風などの悪天候や店舗周辺で開催されるイベントの中止など、突発的に発生する外的要因によって売上が激減したりするようなことがあると、売上の予測がつきにくく資金繰りが上手くいかなくなってしまうこともあります。
安定して顧客を確保するために、同じジャンルの店との差別化を図り、次回以降利用できる割引クーポンやポイントカードを渡すなどの再来店を促す取り組みを行い、初めての顧客だけではなくリピーターを狙った施策も必要になっていきます。
料理が美味しければ繁盛するとは限らない
3つめの理由は、いくら料理の味や素材にこだわったとしても顧客が集まるとは限らないという点です。経営に悩む店主の方からは、「うちの味を知ってくれたら、きっとお客さんが来るはずなのに」と嘆く声をよく聞きます。料理の味や素材にこだわることはもちろん重要ですが、まずはお店を繁盛させるため、「メニュー」「立地」「仕入れ先」の3つの要素について慎重に選んだほうが良いでしょう。
メニューはターゲットとして設定した顧客層が好きそうなものを考えるのがよいでしょう。例えば、20代の女性がターゲットの場合にはその属性に好かれやすいパスタのメニューのバリエーションを増やすなどです。さらに店舗の立地も同様で、ターゲット顧客が訪れそうな場所を選ぶことが大切です。そして仕入れに関しては、「安さ」や「素材の良さ」だけではなく「供給の安定さ」も重視して選びます。ターゲット層が好きなメニューをいつでも出せるようにしておく、ということです。欲を言えば、安さと供給の安定性を兼ね備えた食材を選んで仕入れることが成功の秘訣ともいえるでしょう。
このように、ターゲット顧客のニーズと立地をマッチングさせながらも、安定した店舗運営を目指すことが重要です。
どんな業態が儲かるのか?
高級な食材や料理を扱う料理店のほうが客単価(1人当たりの来店時の売上)がアップし、利益が出やすいのではと考える人も多いでしょう。飲食店の売上を表す式を使ってイメージしてみましょう。たとえば、客単価が3000円のA店と1万円のB店を例に、その他の条件を同じとして比較すると下記のようになります。
1日来店者数 | 客単価 | 月間営業日数 | 月間売上 | |
---|---|---|---|---|
A店 | 30人 | 3000円 | 25日 | 225万円 |
B店 | 30人 | 1万円 | 25日 | 750万円 |
ここでは、月間の売上だけを見れば3倍近くの差があります。しかし、必ずしも客単価が高ければ店が繁盛し、平均収入も増えるとは限りません。そのカギは回転率にあります。
飲食店経営における回転率とは、1日の来客数を店の席数で割った数値です。 当然のことながら、回転率が高いほうがそれだけ注文をするお客様が増えるということになるので、売上は高くなります。客単価が比較的低いラーメン店やファーストフードでは1日10回以上回転することがありますが、高級食材を扱うようなお店では1日1回~2回転ということも珍しくありません。
ここで、先の表に回転率を当てはめて考えてみましょう。A店もB店も店舗の座席数が同じ15人であるとして、客単価の高いB店の回転率が2回で1日の来店者数は30人とします。この時、もしA店の回転率が10だった場合、1日の来店者数は150人となり、掛け合わせた月間売上はB店よりも高くなります。例え客単価が安くても、来店者数が多いことが結果的により高い売上になることもあるのです。
1日来店者数 | 客単価 | 月間営業日数 | 月間売上 | |
---|---|---|---|---|
A店 | 150人 | 3000円 | 25日 | 1,125万円 |
B店 | 30人 | 1万円 | 25日 | 750万円 |
客単価が高いと売上が上がりやすいのは事実ですが、場合によっては回転率とうまく組み合わせて売上アップを狙うほうが効率的かもしれません。
年収1000万円以上の飲食店経営者になるためには
年収1000万円以上を目指すには、年商1億円以上を目指さなければ難しいとされています。
年商とは、企業が1年間で売り上げた全ての金額のことを指します。経費を引く前の金額のため、収入金額ではありません。また自営業者の年収には税金や店のコストを引かれる前の「税込み年収」と、お店にかかる全てのコストや人件費、そして税金を差し引いて、経営者の手元に残る金額である「手取り年収」があります。税込み年収からお店にかかる全てのコストや人件費、そして税金を差し引いて、経営者の手元に残る金額が手取り年収です。
この手取り年収、すなわち取り分は売上の10%程度になると言われています。よって、年収を1000万円以上にしたいということであれば、その10倍の年商が必要になるということです。
しかし、1つの店舗だけであげられる売上には限界があります。例えば、1つ500円のクレープを1か月で3000枚売ったとして、やっと売上が150万円です。毎月同じ売上を1年間上げ続けただけでは年商は1800万円までしか届きません。年収がさらに10%程度になると考えれば、1000万円を目標とした場合かなり険しい状態です。
ここで、1店舗だけでさらに売上を上げようと考えても、1日に営業できる時間は限られていますし、店舗の規模、接客など物理的に障害が多くあります。そのため、求めている年収に対して、店舗数や規模などが適しているのかを考え、必要に応じて複数店舗の経営も検討する必要があるのです。
儲けを出しやすくするために重要なポイント
ここからは年収アップを目指すために、飲食店で利益を出しやすくするポイントを7つ紹介していきます。売上を上げる方法以外にも、店舗の運営の部分などで重要な内容も解説しますのでぜひ参考にしてください。
- 複数店舗経営を行う
- 人通りのある立地で開業する
- F/Lコストの管理を徹底して行う
- スタッフ教育に力を入れる
- 投資をしっかりと行う
- メニューを見直し客単価をあげる
- 飲食店経営にかかるコスト
複数店舗経営を行う
ここまで説明してきたように、中小規模の飲食店経営者の平均年収が600万円ということから考えると1店舗経営で年収1000万円以上を目指すということはかなり難しいことが理解いただけたかと思います。 年収1000万円以上を実現するためには、2店舗以上の経営が現実的です。単純計算すると、月商420万円の店舗を2店舗経営すれば年収1000万円を超えることが可能です。
- 月商840万円(月商420万円×2店舗)×12ヵ月=年商1億80万円
しかし、最初からいきなり2店舗以上出店するというのもおすすめしません。 2店舗目を出店する前提条件として、1店舗目が繁盛している必要があります。また2店舗目を出店する方法としては固定の店舗を持たない移動式店舗や、保存がきく商品であればインターネットでの販売など、幅広い事業展開も視野に入れるとよいでしょう。
人通りのある立地で開業する
出店する店舗の立地は、人通りのよいエリアであればあるほど良いでしょう。さらに、そのエリアに需要のあるジャンルの店であれば、そのエリア・通りをよく利用する人のニーズとマッチし売上を伸ばすことができるでしょう。自分はどんなジャンルのお店を出店したいのか、そしてそのお店のターゲットはどんな顧客層で、どんなエリアを好むのか分析してみましょう。
F/Lコストの管理を徹底して行う
3つ目のポイントは、後述するF/Lコスト管理の徹底です。飲食店の営業を続けていく中で、人気のメニューとそうでないものが出てきます。毎月どのメニューが人気でよく売れているのかを集計し、材料の仕入れを細かく調整していきましょう。また、人件費も非常に重要です。 人件費を削りすぎると、忙しい時間帯に人手が足りません。また離職率が高くなります。安定して長期間働いてくれるスタッフがいない状態になり、お店が回らないという悪循環に陥ります。スタッフを雇う場合は、忙しい時間や曜日の人数を調整してバランスを取っていくことが大切です。
スタッフ教育に力を入れる
店で働いてくれるスタッフが確保できた場合も、来てくれた顧客を不快にさせないよう教育することが大切です。とある飲食チェーンでは、社員研修を行うようになってから2年間で売上げが30%増加したという実例もあります。 これは中小規模の飲食店でも同じで、リピーターを増やして継続的な売上を生み出すためにも、接客や衛生管理について研修期間を設けるなどして、気持ちの良い接客ができるように育成していきましょう。 将来、多店舗経営を考えているのであればなおさらです。スタッフはもちろん、店を任せられる店長クラスの人材育成にも力を入れましょう。また、育成したスタッフがすぐに辞めないよう働きやすい環境づくりについても意識しましょう。
投資をしっかりと行う
店内の設備についても投資をしっかりと行うことが重要です。開業当初は設備に使う費用が少ない場合も多いので、そこまで気にする必要はありません。しかし経営が軌道に乗り始め、利益が継続的にしっかりと出るようになってからは設備を充実させることも検討しましょう。よりおいしい料理を提供できるように最新の器具を購入したり、食洗器など業務を効率化できる設備などを導入するのも良いでしょう。 また、スタッフの人件費のバランスをとりつつ、教育にもしっかりとお金を使うことも重要です。教育資金をかけてしっかりとした接客をスタッフに学んでもらい顧客のリピートにつなげるなど、最終的には店の利益を上げることにつながります。
メニューを見直し客単価をあげる
新しいメニューを考えたり適切な価格設定を行ったりすることは、一見単純に聞こえるかもしれませんが、利益を上げるための重要なポイントになります。例えば、季節の食材をつかった限定メニューをおすすめ商品として売り出す方法などです。 季節の食材は、「その時にしか食べられない」という限定感があるので、通常商品よりも高い値段を設定できます。季節が変わるごとに旬の食材を使ったメニューの開発をしたり、メニューの中で人気のない商品は適切な価格であるかの見直し、または違う新商品へ変更をするなど、小さな積み重ねが売上を上げることにつながります。また、居酒屋であれば宴会メニューの導入なども検討してみるとよいでしょう。
飲食店経営にかかるコスト
税込み年収1000万円を達成した場合でも、半分、もしくはそれ以上がお店の維持費や税金等で消えてしまいます。飲食店経営にかかる経費をしっかりと把握することで、着実に売り上げを確保できるようにしましょう。主な経費について説明していきます。
- F/Lコスト
- 家賃
- 水道光熱費
- 広告宣伝費
F/Lコスト
食材などの材料(Food)と人件費(Labor)の合計金額の事です。売上のうち、このF/Lコストが売上高の何%を占めているのかという比率を「F/L比率」といいます。このF/L比率が高いと、原価率も高く、利益が低い状態となります。
利益を上げるためには、F/L率の割合を低くするように心がけます。といっても、食材の原価は低すぎると料理の味に影響し、高すぎると経営を圧迫します。また、人件費を抑えようと従業員の給与を下げすぎると人が集まりません。適切な原価を意識してメニューを作成し、人件費も混み具合や業務量を日々予想して何人に働いてもらうのかを計算し、適切なコストに抑えるよう心がけましょう。
家賃
売上を上げるために、たくさん集客したいという考えはどこのお店も同じです。駅前などの人通りが良い立地にお店を出したい場合は、それなりの賃料がかかります。新しいお店を開くには、やはり沢山の人の目につくように大きい通りなどに出店したほうが有利になります。立地・人通り相応の家賃が発生することは覚悟の上で探しましょう。
水道光熱費
店舗を運営する際に必ず発生する費用です。具体的な節約方法を決めておかないとただただ経費がかかってしまいます。従業員にも節約の大切さを伝え、協力してもらうようにしましょう。
広告宣伝費
飲食店まとめサイトへの掲載費用や、ホームページ、チラシの作成など集客を伸ばすために必要な経費です。具体的な例を挙げると、お店のホームページの作成、グルメサイトへの掲載やチラシの作成などがあります。また、InstagramやX(旧Twitter)など、SNSを駆使した宣伝方法も今は主流になりつつありますので、ターゲットの顧客層に合ったSNSを調べ試しに出稿してみるのもよいでしょう。SNSでの広告は、無料で利用できるものもありますがより効果を出したい場合には有料になるものもあります。
まとめ
飲食店の経営は市場が飽和状態になっていることもあり、継続して利益を上げ、人気店になることはなかなか難しいのが現実です。そのため、ターゲットの顧客層を明確にすることや同じジャンルの店と差別化できるようなメニュー開発、ターゲットに合った広告宣伝方法や、無料で利用できるSNSなどを活用して集客活動を戦略的に行うことが重要です。
飲食店経営者の平均年収はサラリーマンの平均年収よりも高い数値が出ていますが、あくまでも平均値ということを理解する必要があります。飲食店経営者の中には赤字経営で毎月苦しんでいる方も多くいます。開業できたからといって、必ずしも年収がアップするわけではありません。オープン時は混雑するかもしれませんが、その後リピートしてくれる顧客を増やしたり、ターゲットにあった顧客をさらに呼び込めるよう努力し続けたりすることが重要なのです。
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