小さな規模の居酒屋は、少人数や個人で飲みたいという人のニーズに応えられます。生活様式や働き方の変化にともない、開業を考えている方もいるでしょう。今回は、小さな居酒屋を経営するメリットや流れを解説します。
目次
小さな居酒屋の具体的な大きさ
基本的に飲食店の開業というと、業態を問わず10坪以上あることが理想的ですが、10坪以下の大きさでも開業自体は可能です。本記事で解説する小さな居酒屋の場合は、具体的に10坪前後、席数10席以下の大きさを想定して解説します。
小さな居酒屋を経営するメリット
小さな居酒屋は、小さい規模ならではの経営するメリットがいくつかあります。以下では、そのメリットについて紹介します。
- 必要なコストが少なくなりやすい
- 従業員の必要性が少ない
- ひとり飲みのニーズに対応しやすい
- 店内や顧客ひとりひとりに目が届きやすい
必要なコストが少なくなりやすい
大きい店舗よりも、比較的さまざまな費用を抑えやすいのが、小さな居酒屋の経営メリットといえます。まず、小さな居酒屋は店舗が小さい分、開業に必要な物件取得費や工事費用などが抑えやすいです。
また、店舗自体が小さければ小さいほど、用意する機材や道具も少なくすみます。準備にかかるコストだけでなく、家賃や光熱費などのランニングコストが少なくなりやすいのも小さな居酒屋の特徴です。
従業員の必要性が少ない
小さい居酒屋は、少ない従業員でも経営ができるというメリットもあります。カウンター席中心の居酒屋など、場合によっては1人だけでお店を回すこともできます。従業員が少なければ、その分だけ人件費を浮かせられます。
ひとり飲みのニーズに対応しやすい
小さい居酒屋はスペースが限られているため、団体客が入りにくいです。そのため、ひとりで気兼ねなく飲みたいという「ひとり飲み」や少人数で飲みたいというニーズに比較的応えやすいのもメリットといえます。
小さい居酒屋ならではの魅力を活かすため、1人でも入りやすい雰囲気作りをする、カウンター席を用意する、少人数用のメニューを作るなど、積極的にニーズを汲み取ったお店作りを心がけましょう。
店内や顧客ひとりひとりに目が届きやすい
小さな居酒屋は、お客さまひとりひとりに目が届きやすいというメリットがあります。来店客の必要としていることや困っていることなどにすぐ気付ければ、その分良い接客につなげやすいです。
また、接客中にお客さまとの距離が近くなりやすいのも小さな居酒屋の特徴です。店員のコミュニケーション能力や人柄がお店の評価にもつながります。メニューだけでなく、店員との会話を目当てに来店してくれる人や常連客を大切にしましょう。
小さな居酒屋を経営するデメリット
小さな居酒屋の経営には、メリットもあればデメリットもあります。続いては、そのメリットや注意点についてもまとめていきます。
- 参入障壁が低くライバルが多い
- 売上の上限が低め
- 仕入れでのコストダウンがしにくい
- ケガや病気に対応しにくい
参入障壁が低くライバルが多い
小さな居酒屋は、開業にかかる必要なコストが比較的少ないため、参入障壁が低いです。参入がしやすいということは、ライバル店が多くなるというデメリットとしても捉えられます。
競合が多ければ、相対的な評価を受けやすく、常に顧客ニーズを意識し続ける必要があります。開業の段階で周囲に同じようなコンセプトの居酒屋がないか確認しましょう。また、メニューや店作り、接客などで他店との差別化をはかることも大切です。
売上の上限が低め
小さな居酒屋は、お店の収容人数が少ない分売上に限界があります。売上の最大値を上げたい場合は、回転数を上げる、客単価を上げる仕組みや対策を用意する必要があるかもしれません。対策を練る場合は、数字にとらわれた策を安易に行うのではなく、顧客の満足度も考慮しながら慎重に行いましょう。
仕入れでのコストダウンがしにくい
収容人数が少ない小さい居酒屋は、料理の提供なども比較的少ないため、仕入れを行う材料の数も必然的に少なくなります。一度に大量購入ができない分、どうしても仕入れ値のコストダウンが難しくなってしまい、費用がかさんでしまうというデメリットもあります。
対策としては、常連客を増やしたり、固定費を節約してカバーしたりという方法が挙げられます。
ケガや病気に対応しにくい
少ない従業員でお店を回す場合、自分や従業員が病気やケガをしたときの対応がしにくいというのも、小さな居酒屋を経営するデメリットのひとつです。特に経営者本人が働けなくなってしまった場合、お店の一時休業が必要なケースもあります。また、従業員を雇っている際は、急な退職などにも対応がしにくいです。
予期せぬトラブルで損失が起こらないよう、普段からリスクを踏まえたうえで行動し、従業員とも良好な関係性を築いていけるよう注力しましょう。
小さな居酒屋の開業・経営に必要な資金
実際に小さな居酒屋の開業や経営を考えている方にとっては、必要な資金なども気になるところです。以下では、おおよその開業資金や内訳について紹介していきます。
開業資金の目安と内訳
小さな居酒屋の開業資金の目安は、500〜1000万円程度とされています。立地や内装によっては、2000万円ほどかかることもあります。数字はあくまでも目安として考え、実際に開業する場合は、自店の理想となる条件を照らし合わせながら具体的な金額を算出していきましょう。
開業資金の主な内訳は、以下の通りです。
- 物件取得費(保証金、敷金・礼金、仲介手数料、前払い家賃)
- 内装/外装工事費
- 厨房設備費
- 空調設備費
- 備品(食器、調理器具など)
- 広告費
- 運転資金
具体的な内訳の金額については、以下の記事も参考にしてみてください。
https://www.i-nobori.com/media/4446
必要な運転資金
お店の開業直後は、売上が安定せず赤字が続くことが予想されるため、ある程度の運転資金を予め用意するのがおすすめです。必要となる運転資金額については、お店の状況によるため一概には言い切れませんが、およそ3〜6ヶ月分程度を目安とするのが一般的です。
小さな居酒屋の開業・経営を成功させるコツとは?
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小さな居酒屋を成功させるコツとして重要なのは、自店舗の売りの把握と差別化です。大手居酒屋チェーンとコンセプトがかぶらないよう専門性を高め、価格での勝負を避けるのが基本的な考え方になります。
また、客足が途絶えないよう、常に効果的な集客施策を行うことも大切です。開業前から、チラシやSNSなどを使って宣伝を行いましょう。開業後もグルメサイトへの登録やターゲットに合った宣伝の実施を行うことで、集客につながりやすくなります。
小さな居酒屋を開業するまでの流れ
それでは、実際に小さな居酒屋を開業するまでの流れを解説します。手順ごとにポイントもまとめているため、開業を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
- コンセプト作り
- 物件探し
- 事業計画書の作成
- メニュー作り
- 資金調達
- 必要な資格・届け出の準備
コンセプト作り
競合に負けない居酒屋を作るためには、いかにわかりやすいコンセプトを作ることができるかが大切です。理想を追求するのも良いですが、まずは自店の立地などを踏まえたうえでターゲットを明確に定めることから始めましょう。いつ、どんな人に来てもらいたいかを具体的に考え、そのターゲットが望むものを考えるとコンセプトも作りやすいです。
また、一度コンセプトを決めてしまえば、この後の物件探しや内装・外装工事、メニュー作りなど、あらゆる物事の方向性も定まりやすいです。コンセプトに沿った統一感のあるお店作りを行いましょう。
居酒屋のコンセプトの作り方については、こちらの記事で解説しています。
https://www.i-nobori.com/media/2409
物件探し
コンセプトが決まった後は、居酒屋を開業する物件を探します。飲食店の店舗は、1度決めると簡単に変えられません。そのため、お店の立地決めや物件選びが重要な作業となります。また、駅の近さや商業施設の多さなども集客に影響する可能性があります。コンセプトやターゲットに合致した物件を選びましょう。
事業計画書の作成
続いては、居酒屋を開業するうえで欠かせない、事業計画書の作成です。金融機関から融資を受ける際にも必要になりますので、しっかり作成する必要があります。なぜ居酒屋を始めるのか、なぜ利益が見込めるのか、具体的にいくら必要で、どの程度の売上が見込めるのかなど、客観的な根拠などを明確に記載してください。
開業をスムーズに進めるためにも、事業計画書は早めに作成するにこしたことはありません。タイミングとしては、物件選びと並行して進めていくのがおすすめです。
メニュー作り
物件が決まったら、実際にお店で販売するメニューを作り始めましょう。お店のコンセプトやターゲットのニーズなどを考慮した内容にすることが大切です。
単にメニューの種類が多ければいいというわけではありません。メニューが増えるほど必要な材料が増えてしまうというデメリットがあります。利益率の高い定番メニューや、地域ならでは限定メニューなど、バランスよく揃えてみてください。
資金調達
作成した事業計画に基づいて、必要な資金を調達する必要もあります。資金調達には、地方自治体からの融資や、助成金の活用などいくつか方法がありますが、代表的なのは金融機関からの融資です。
特に政府系の日本政策金融公庫は、融資制度によって担保や保証人が不要であるなどのメリットがあります。融資を受けられる対象や必要な事柄については、概要を確認し、利用を検討してみましょう。
必要な資格・届け出の準備
最後に、必要な資格や届け出の準備についても漏れがないよう準備しましょう。条件によって必須の資格も変わります。また、申請によっては届けを忘れてしまうと罰則があるケースもあるため、いつまでに何を準備したら良いかをしっかり確認し、忘れないようにしましょう。おおまかには、以下の表を参考にしてみてください。
資格・届け出 | 必要の有無 | 補足 |
---|---|---|
食品衛生責任者 | 必須 | 合計6時間の講習を受講することで取得可能です。専門的な知識やスキルは一切必要ありません。 |
防火管理者選任届 | 収容人数によって変動 | 収容人数が30人以下であれば、設置の義務はありません。 |
食品営業許可申請 | 必須 | 保健所への申請が必要です。 |
防火対象設備使用開始届 | 必須 | 消防署への申請が必要です。 |
火を使用する設備などの設置届 | 火を使用し、一定条件を満たす場合必要 | 厨房などで火を使う場合、設置している設備によっては消防署に届け出が必要です。 |
開業届 | 個人事業主として開業した場合必要 | 税務署への届け出が必要です。 |
深夜酒類提供飲食店営業開始届 | 営業時間によって必要 | 0時以降にお酒を提供する場合、警察署に届け出が必要になります。 |
労災保険の加入手続き/雇用保険の加入手続き | アルバイトなどを雇った場合必要 | アルバイトなどを雇用する場合に必要です。 |
上記以外にも、条件によっては届け出が必要なものがあります。従業員を雇う場合や、営業時間、提供するメニューなど特殊なケースがある場合は、前もって調べておきましょう。
まとめ
小さな居酒屋は、少人数やひとり飲みのニーズに応えられ、顧客とも親しみやすいのが魅力です。しかし、競合も多く長く安定した経営を続けていくのは簡単なことではありません。スムーズな開業や経営成功のためには、準備や戦略をすることが大切です。ぜひこの記事を参考に、自分自身や顧客が満足できるような理想のお店作りを目指しましょう。
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