マーケティング手法の用語として、「O2O」という言葉があります。インターネットと実店舗での顧客化についての用語なのですが、「OMO」「オムニチャネル」という似た言葉もあり、具体的にどのような違いがあるかわかりにくいところがあります。そこで今回はO2Oについて、成功事例などもあわせて紹介します。
目次
O2Oとは?オムニチャネルやOMOとの違い
O2Oとはマーケティング用語のひとつで「Online to Offline」を略した言葉です。ウェブサイトなどのオンライン上で集客した客を、オフラインである実店舗へと誘導して顧客化を図ることを指します。
具体的な例をあげると、自社で運営しているウェブサイトへ訪れた客に対して、自社の実店舗だけで使用できる限定クーポンを発行し、実店舗への来店を促して購入を促し、最終的には顧客化へ結びつける、というものです。
似たような言葉として「オムニチャネル」「OMO」というものもあります。「オムニチャネル」のオムニとは「すべての」という意味、チャネルとは「流通経路、企業と顧客の接点」という意味を持ちます。つまり、どの流通経路でも同様の価格で顧客に商品を提供して囲い込みを図るというものです。
一方の「OMO」とは、「Online Merges with Offline」の頭文字をとった言葉で、オンライン、オフライン関わらず、顧客が商品・サービスの存在を知ってから購入までの顧客の行動に対してアプローチを図るというもので、O2Oやオムニチャネルよりも比較的新しい考え方とされています。
それぞれの用語をまとめると以下のようになります。
手法 | 概要 | 目的 |
---|---|---|
O2O(Online to Offline) | オンラインからオフラインへ顧客を誘導し、購入を促す手法 | 新規顧客を実店舗へ「誘導」し、商品購入を後押しすることで、顧客化すること |
オムニチャネル | すべての流入経路が共通のデータを持っているため、どのチャネルからでも同様の価格で利便性の高い購入接点を提供する手法 | 既存顧客をファン化するために「囲い込む」こと |
OMO (Online Merges with Offline) |
オフラインとオンラインを区別せず、購入にいたる前の検討行動からアプローチする手法 | 購入にいたるまでに通る検討行動をより便利なものに「向上」させること |
O2Oはもう古い?普及した背景
O2Oについては、今後も普及が広まるとされる一方で、すでにもう古い観点なのではないかという見方もあります。その理由として、Googleトレンド(2022年8月時点)によると、検索されていたピークは2013年であり、その後の検索数が減っていることから、2022年時点ではもう下火なのではないか、ということがあげられています。
その根拠を知るためにも、O2Oが普及していった背景について紹介します。
スマートフォンやSNSの普及
総務省が行った「令和3年通信利用動向調査」によると、スマートフォンの保有状況は、世帯の保有割合が 88.6%、個人の保有割合が 74.3%と年々伸び続けています。また、個人でのインターネット利用機器の状況は、20~49歳の年齢階層でそれぞれ約9割がスマートフォンを利用しています。
それに伴い広範囲にアプローチできるという観点から、オンラインから実店舗への集客に結びつけやすいということでO2Oのマーケティング手法が適しているとされてきたのです。
また、同調査によって、SNSを利用する個人の割合は78.7%という結果があり、SNSは拡散力が高いうえにユーザー数も多いということからも、O2Oが普及した背景につながったとされています。
参考:令和3年通信利用動向調査
実店舗が再評価
インターネットの普及に伴い、ECサイトの需要が活発になった結果、実店舗の売上が伸び悩むという問題も生じがちになりました。しかし、例えばアパレルの場合は実際に自分で試着をすることができるなど、直接体験や体感ができる実店舗ならでは強みが再認識されています。
O2Oマーケティングでは、こうしたECサイトと実店舗の使い分けができるということが大きなポイントとしてあげられるでしょう。
O2Oマーケティングのメリット
では、O2Oマーケティングを行うことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは3つのメリットを紹介します。
- 新規顧客の獲得
- 各顧客にあったサービスが提供できる
- 即効性が期待でき、効果測定が行いやすい
新規顧客の獲得
新規顧客の獲得を図る際に、チラシ配布やDMなどのオフライン上だけで販促を行おうとすると、配布エリアやチラシの配布枚数などに制約が生じてしまう場合があるため、アプローチとして範囲が限られてしまいます。
一方、オンラインで新規顧客獲得を図ろうとすれば、より広範囲に、さまざまなチャネルを用いてアプローチすることができ、既存顧客だけでなく、潜在的な顧客に対しても情報伝達することが可能です。
各顧客にあったサービスが提供できる
例えばECサイトなどのオンライン上では、利用した顧客の購入履歴やウェブサイトの検索履歴など、さまざまな顧客情報を得ることが可能です。その顧客情報をもとに、顧客ひとりひとりにあわせたサービスや、顧客が興味をもちそうな情報をピックアップして提供することで顧客の目に留まり、リピーターとして定着する見込みが期待できます。
即効性が期待でき、効果測定が行いやすい
インターネットの活用は、チラシ配布などのオフラインと比較してリアルタイムでアプローチをすることができるため、高い即効性を期待することができます。特にSNSを用いてのアプローチは即効性だけでなく拡散力も高まります。
また、SNSやメールマガジンなどを通じて限定クーポンを配布すると、どのくらいの期間に利用されたかなどの効果測定を行うこともでき、高い即効性もあることから改善点をすぐに明確にすることが可能です。
O2Oマーケティングの課題
新規顧客獲得のしやすさや高い即効性などメリットが多いO2Oマーケティングですが、いくつかの課題もあげられます。ここでは、O2Oマーケティングにおける課題として3点紹介します。
- 一方通行のコミュニケーションになりがち
- 顧客単価が上がりにくい
- 競合と比較されやすい
一方通行のコミュニケーションになりがち
O2Oは、オンラインからオフラインへつなげるためのアプローチ手法であるため、一方通行のコミュニケーションになってしまうことも考えられます。そのため、実店舗へつなげるアプローチに重点をおいたとしても、実際には顧客の購入までは結びつかなかったり、購入したあとにリピーターとしては定着しなかったりということも生じてしまいます。それを防ぐためには、一方通行にならないような、オンラインとオフラインに顧客をまきこんだ双方向でのアプローチが必要です。
顧客単価が上がりにくい
一般的なO2Oマーケティングで活用される手法は、クーポンの配布やキャンペーン割引によって集客を図るというものです。その割引によって、実質的には顧客単価が下がってしまうこともO2Oの課題としてあげられています。それを防ぐためには、単なる割引で終わらせず、複数の購入を促すなど、顧客単価が下がらないような工夫が必要になります。
競合と比較されやすい
オンラインから発信するO2Oマーケティングの場合、基本的なターゲットとなるのは、SNSユーザーをはじめとしたインターネット利用者です。複数のSNSを活用する顧客の場合、競合他社から同様のアプローチを受けていることがあり、顧客がそれぞれを比較して使い分けを行っている可能性も考えられるでしょう。そのため、実店舗への来店までは至らないということが生じます。競合他社との比較はまぬがれないとしても、競合他社を上回るような来店へと促すアプローチ方法や特典などの工夫が重要です。
O2Oマーケティングを成功させるために活用すべきサービス
O2Oマーケティングは、いろいろなサービスをうまく活用することで、より高い効果を得ることが期待できます。ここでは、O2Oマーケティングを成功させるために活用すべきサービスを5点紹介します。
- ECサイト・公式アプリ
- SNS
- 位置情報
- 店頭受け取りサービス
- QRコード
ECサイト・公式アプリ
ECサイトと実店舗との大きな違いとして、ECサイトには営業時間や立地での制約がないということがあげられます。どの時間帯でもどの地域からでもアクセス可能なECサイトなら、実店舗の営業時間帯に来店することのできない顧客でも、商品購入以外にも在庫状況を確認したり、最新情報を入手したりすることが可能です。
また、公式アプリの導入により、セール情報や限定クーポンをプッシュ通知でタイムリーに配布し、来店促進につなげることもできます。また、公式アプリに会員カードの機能を持たせることで、顧客ごとの購入履歴や来店履歴など細かいデータを取得でき、顧客ごとのアプローチが可能になります。
SNS
SNSの利点は拡散力とスピードです。SNSによってターゲット層が異なるため、アプローチしたい内容によって使い分けることもできます。また、SNSの公式アカウントを作成すれば、SNSユーザーである顧客とも直接やりとりをすることもできるため、O2Oの課題点としてあげられていた一方通行になりがちなアプローチが解決できます。
SNSは拡散スピードが速いことから、リアルタイムでのイベントやキャンペーンの告知を行うことで、実店舗への来店を促すことにも高い効果が期待できます。
位置情報
スマートフォンに内蔵されている位置情報機能を活用すると、利用したい顧客に最も近い実店舗の情報を識別して配信することができます。そのため、顧客自身が最寄りの店舗がわからないときにもスムーズに情報を入手することが可能です。
また、来店ポイントのシステムや最新情報のプッシュ通知といった機能も活用することで、他の広告を用いてコストをかけることなく、さまざまな情報発信と来店促進を図ることができます。
店頭受け取りサービス
ECサイトは便利である一方で、購入する際に発生する送料が顧客にとってもネックとなりやすい点でした。そこで取り入れたいのが「店舗受け取りサービス」です。ECサイトで購入した商品を、顧客の近隣の実店舗で受け取ることができるため、顧客にとっては送料を支払わずに済み、店舗側にとってはECサイトでの購入をきっかけに再来店を促すきっかけにつながります。
QRコード
自店の公式アプリやLINE公式アカウントの友だち登録などに利用するQRコードを店内のレジ周りなどに設置して、その場で会員登録を促す方法です。スマートフォンで登録できるため、手軽に新規顧客獲得に結びつけることができます。公式アプリに招待機能を導入して、購入ルート以外からの顧客獲得も見込めます。
O2Oマーケティングの成功事例
O2Oマーケティングでは、大手企業が導入して成功した事例もあります。最後に、大手企業がO2Oマーケティングで成功につながった事例を2例紹介します。
ユニクロ
ファストファッション大手の「UNIQLO」は、公式アプリの導入により、オフライン、オンラインいずれにおいても利便性向上を成功させています。具体的には下記のような事案があげられます。
- 公式アプリの会員証提示により、会員限定価格で商品を購入することが可能
- オンラインで発注した商品を、最短2時間で店舗受け取りが可能
- 店舗受け取りは送料無料のサービス
また、オンラインからオフラインの一方向だけでなく、店内にあるバーコードをスキャンすることで在庫状況が把握できるほか、店内商品のスタイリング例をアプリで確認できるといった活用方法も展開しており、一方向だけでない、オフラインからオンラインでのO2Oマーケティングも成功しています。
(2022年8月時点)
ニトリ
ニトリでは、その週の特売チラシや新商品紹介をオンライン上で発信しているほか、顧客が店内で気になる商品を見つけた場合には公式アプリ上で商品を撮影すると該当商品や類似商品を画面上に提示してくれるサービスがあります。さらに、店内で商品バーコードを読み取るとオンライン上で購入することが可能です。
オンラインとオフライン双方向でのアプローチを可能にすることで、顧客の購入機会をできるだけ逃さずに売上に結びつけるような仕組みづくりを展開しています。
(2022年8月時点)
参考:顧客体験のまったく新しい可能性─ニトリのO2O推進室が仕掛ける | ニトリン
まとめ
今回は、O2Oマーケティングについて、普及につながった背景や導入するメリット、実際の成功事例などを紹介しました。
O2Oマーケティングとは、オンラインからオフライン、つまりECサイトなどのオンライン上の顧客を実店舗へ促すためのマーケティング手法です。オンラインを活用することから、新規顧客の獲得や即効性が見込める販促に高い効果を期待できます。しかし、一方向になりがちな点や、顧客単価が上がりにくいというのが課題でもあるため、SNSや公式アプリなどを多彩に活用し多方面からのリアルタイムなアプローチを行うことが大切です。自店にあった方法で、マーケティングに生かしてみてはいかがでしょうか。
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