「集客」と「マーケティング」は似ているワードのため、違いがよくわからないという方も多いでしょう。正確に言うと、集客はマーケティングの一部の手法です。
この記事では、集客とマーケティングの知識を身に付け、売上につながる集客力アップのための施策の進め方を解説します。
目次
集客とマーケティングの違い
冒頭でも述べたように、「集客」は「マーケティング」の1部であり、そもそも並列で比較されるものではありません。それぞれについては後ほど詳しく説明しますが、マーケティングは商品やサービスを提供し売上を作るために企業が行う全ての活動を指し、その販売戦略の一部に集客が位置しているのです。
市場調査をしてどんなに良い商品を作っても、その価値が顧客に伝わらなければ商品は売れません。だからこそ顧客を集め自社の商品やサービスを知ってもらい、その商品が顧客にもたらす価値を理解してもらう必要があるのです。 集客とマーケティングはよく似ている言葉ですが、集客は「開発した商品を顧客に届ける」という、マーケティング活動においての重要な最終工程です。
集客とは
集客とは、商品やサービスの特徴や魅力を世の中に発信し、店舗やWEBサイトに顧客を集めることです。
ただし、顧客に商品やサービスを購入してもらうだけでなく、その後継続的に購入するなど商品やサービスのファンになってもらうまでが、集客の目指すべきゴールです。
集客とは一度限りではない
1度きりの購入のために顧客を集めるだけでは、長期的に売上を上げることはできません。
確かにイベントのような人を集めるスポット的(一度限り)な「顧客集め」は、多くの顧客に認知してもらうためには有効です。しかし、そのイベントだけで終わるのではなく、その後も継続的なアプローチをしていき長期的な関係を築くことが大切です。また、継続的なフォローをしていくことで顧客との関係を深化させていくことも集客につながります。
集める顧客やターゲットはだれか
一口に「顧客」と言っても、商品・サービスの利用の有無や頻度によってさまざまな種類に分類できます。分類の方法はいくつかありますが、ここでは以下の5つに分けるパターンについて紹介します。
顧客の種類 | 特徴 |
①VIP顧客(優良顧客) | VIP顧客(優良顧客)とは、何度も商品やサービスをリピートして購入してくれている愛用者のことです。商品やサービスへの満足度から、購入頻度はもちろん1回あたりの購入金額も高く、継続的な利用によって企業の利益獲得の要にもなる顧客です。 |
②新規顧客 | 新規顧客とは、自社のサービスや製品を初めて購入してくれた顧客です。 |
③見込み顧客 | 見込み顧客とは、製品やサービスの購入を検討してくれている顧客です。すでに自身のニーズも把握しているうえで、自社や商品のことを知っており、関心を持ってくれている状態です。 |
④潜在顧客 | 潜在顧客とは、まだ自社のサービスや商品や自身のニーズを認知していないが、見込み顧客になりうる顧客です。自身のニーズに気づいてもらい、自社の商品やサービスを知ってもらうことができれば見込み顧客へと変化します。 |
⑤休眠顧客 | 休眠顧客とは、過去に商品やサービスを購入してくれたことはあるが、購入が止まってしまった顧客です。 |
顧客の種類に応じて異なる方法でアプローチをかけていくと効果的な集客がしやすくなるでしょう。
集客の強化やリピーターを増加させるコツについては、こちらの記事で解説しています。
集客とはそれぞれの顧客層を惹きつけること
先ほど顧客を5つのセグメントに分けましたが、集客はそれぞれの顧客層にあわせて行います。それぞれの顧客層に対して行うアプローチには異なる目的があります。
顧客の種類 | 集客を行う主な目的 |
VIP顧客(優良顧客) | ずっと自社の商品やサービスを使い続けてもらうため |
新規顧客 | 継続購入してもらいVIP顧客(優良顧客)になってもらうため |
見込み顧客 | 購入検討中のハードルを払拭して新規顧客になってもらうため |
休眠顧客や潜在顧客 | 自社の商品やサービスに気づいてもらうため |
このようにどの顧客を集めるかによって果たしたい目的が異なるため、集客する際の発信メッセージを変えることが大切になります。たとえば「紹介者キャンペーン」はVIP顧客には効果があるかもしれませんが、商品やサービスから離れている休眠顧客には効果が低い可能性があります。
また、潜在顧客や見込み顧客に対してはSNSなどでブランドの世界観などの共感してもらえるコンテンツを発信することで商品やサービスを認知してもらえる可能性があります。 休眠顧客やVIP顧客には、購買欲求を再燃させるために、メールなどのダイレクトメッセージでより深いコミュニケーションをすることで惹きつけることが可能です。
つまり集客とは、それぞれの顧客層に合わせた方法でコミュニケーションをとり、自社のサービスに顧客を惹きつけることとも言うことができるかもしれません。
休眠顧客にアプローチして呼び起こす方法については、こちらの記事を参考にしてみてください。
マーケティングとは
マーケティングを辞書で引くと以下のように定義されています。
商品が大量かつ効率的に売れるように、市場調査・製造・輸送・保管・販売・宣伝などの全過程にわたって行う企業活動の総称。市場活動。販売戦略。
引用:Oxford辞書
このような説明だと初心者の方には難しい用語も含まれています。そこで、ここではマーケティングについての理解を深められるよう、よりわかりやすく解説していきます。
マーケティングとは企業活動の総称
マーケティングとは、市場調査から商品開発、販売戦略まで、売上を上げるための全ての活動のことです。市場調査や商品開発までをマーケティングと狭い範囲で定義している企業やサイトも多く見受けられますが、実際は販売戦略までを含みます。 また、販売戦略は新規顧客を獲得するだけではなく、リピート客を増やすことで企業の売上を盤石化(安定的で強固なものに)する活動までを意味します。
集客がマーケティングに重要な理由
集客することで、顧客に商品やサービスを知ってもらい、購入を検討してもらえます。なぜ集客がマーケティングにおいて重要なのかを解説します。
商品やサービスを知らないと顧客は買わない
当然ですが、商品やサービスの存在を知らないと顧客はあなたの商品を買うことができません。「衝動買い」という言葉がありますが、衝動買いも店頭やECサイトで顧客が偶然商品を発見・認知することで、購入を検討した結果衝動的に買ってしまうことを指します。 つまり、どんな方法であれ、商品やサービスを顧客に知ってもらう必要があります。 そして、その商品やサービスが顧客にどのような良い影響をもたらしてくれるかを気づかせることが大切です。
集客数アップが売上アップにつながる
事業で売上を出すためにはまず集客が大切になります。では、その理由を説明する前に売上がどのように計算されているかを見ていきましょう。 売上は以下の式で計算できます。
- 売上=顧客数×購入回数×1回当たりの平均購入金額
ここで気をつけるポイントは集客した顧客全員が購入してくれるわけではないという点です。そのため顧客数は、集客した人数×購入率から求めます。購入率は集客出来た客数のうち購入した客数が何人いるかを表す数値で、このような式で算出できます。
- 購入率=購入客数÷集客数
このことから、最初の式は以下のように分解できます。
- 売上=集客数×購入率×購入回数×1回当たりの平均購入金額
目標の売上に対して、どれだけの集客数が必要になるかも、この式から算出できます。 たとえば、1ヵ月で100万円の売上を上げたい場合の例を紹介します。 (過去の実績から、購入率は10%、顧客の月間の平均購入回数が1.5回、平均購入金額が5000円であったとします)
目標の集客数の計算例 |
100万円 = 集客数×10%×1.5×5000 集客数 = 100万÷(10%×1.5×5000)=1333 |
この例では、1333人の集客を行うことで、目標の売上を達成することができる計算ができます。ただし、集客の対象をVIP顧客や購入経験のある顧客に絞り込めば、購入回数や平均購入単価を上げることが期待できるので式に反映することができます。
集客力を上げる戦略を考えるポイント
- 集客を行うターゲットとゴールを設定する
- 仮説を作りテストを行う
- 競合の施策にもアンテナを張る
- PDCAサイクルを回すことで臨機応変に対応
- 効果的な集客方法を実行する
前章では顧客人数が売上を構成している要素であることを説明しました。つまり売上を上げるためには、集客数を増やすための「集客力」を上げることが必要だということです。ここでは、集客力をアップさせるための施策の進め方を解説します。
集客を行うターゲットとゴールを設定する
集客の施策ごとにターゲットとゴールを設定します。 まずターゲットを設定する際にはVIP顧客、新規顧客、見込み客(または潜在顧客)休眠顧客の誰にするのかを決定します。 例えば新規顧客を何人増やす、休眠顧客のうち何人にもう一度購入してもらう、など、具体的な数値でゴールを設定すると良いでしょう。
VIP顧客の場合は、購入単価や購入回数を増やすなどがゴールになるでしょう。 ターゲットとゴールは測定しやすく実現可能なものに設定すれば、施策後にどの顧客の集客につながったのか結果がわかり、次の施策にも活用できます。
なお、ターゲットを決める際は、顧客の分類だけでなく「ペルソナ像」の設計も行ってみましょう。ペルソナとは、ターゲットとなる人物の性格やライフスタイル、年齢、性別、職業、容姿などを細かく設定し、1人のリアルな顧客像を作り上げることを指します。ターゲットとなる人物が具体的にイメージできることで、より明確なアプローチ方法がわかるようになります。
ペルソナの設定についてはこちらの記事を参考にしてみてください。
仮説を作りテストを行う
集客の施策を打つのであれば、事前に仮説を作り、小さくテストをすることをおすすめします。
仮説とは「この顧客層にこのようにアプローチすれば求める成果が出るのでは?」というシナリオのことです。たとえば新規顧客を獲得するために、ターゲットとする「高年収世帯」にチラシを配布するとします。
いきなり広範囲に一斉に配布するのではなく、まずは1つの高級住宅地のエリアに絞って配布し、成果が見られるようであれば複数の高級住宅地に拡大したほうが良い場合もあります。
商品発売を大々的にアナウンスしたい場合など、多くの人に集客を行う時は一定の予算が必要です。その分、失敗したときのリスクも大きくなります。実施する前に小規模のテストを行い、顧客の反応を見ることで、このようなリスクを下げることができます。
競合の施策にもアンテナを張る
以前効果があった集客施策を再度実行しても成果が出ない場合があります。それは顧客を取り巻く環境には、自社のみではなく競合他社の存在があるからです。 競合他社が集客のための施策をどのように打っているかなど常にアンテナを張るようにしましょう。
たとえば、「10%OFF」の訴求でチラシなどで集客を行ったとしても、競合他社が「30%OFF」という訴求で大々的に集客をしている場合、成果が上がりにくい可能性があります。 しかし、だからといって次の施策で30%に合わせる必要があるというわけではありません。価格の割引合戦や過度な販促合戦は自社のブランド棄損にも繋がりかねません。 また、顧客も割引のある時にしか買わないというVIP化の逆を行ってしまう可能性があるからです。
あくまでも競合他社の施策は集客施策を振り返るための参考情報として活用することをおすすめします。例えば他社が30%OFFの施策期間中に集客の成果が下がっているのであれば、その20%の差を埋めるための商品やサービスの開発に注力するという対策を取ることもできるでしょう。
PDCAサイクルを回すことで臨機応変に対応
集客はPDCAサイクルを回し顧客の反応を見ながら柔軟に対応することが重要です。PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取ったマネージメント手法です。
PDCAサイクルを集客にあてはめると「集客のターゲットとゴール設定」のP、「仮説に基づいて実際に集客施策を実施」するD、「ゴールに対しての成果振り返り」のC、「Cの結果に対しての改善のアクション」としてのAが適切でしょう。
とくに、Cの集客の成果を必ず振り返り、ゴールに対して結果がどうだったかを評価することが重要です。成果が出なかった場合は、集客の方法自体を変えるのか、方法は変えずに訴求内容を変えるのかを判断します。状況によってはそもそものターゲット設定やゴール設定が適正だったのかまで遡り評価をすると良いでしょう。 顧客を取り巻く環境は常に変化するため、PDCAサイクルを回すことで顧客の反応や取り巻く環境に柔軟に対応できるようになることが重要です。
効果的な集客方法を実行する
実際に集客を実践する際には、より効果的な方法を取り入れるようにしましょう。集客方法といってもさまざまで、商品やサービスによって適したものは異なります。よく集客方法として活用されているものには以下のようなものがあります。
- チラシやDMの配布
- メールマガジンの配信
- SNSの活用
- Googleマップの検索結果を最適化する(MEO)
- 検索エンジンでの上位取得を狙う(SEO)
- WEB広告を出す
それぞれ、かかるコストや手間なども大きく異なるので、自社にあったものを探してみましょう。集客のアイデアについては以下の記事でも詳しく紹介しているので、参考にしてみてください。
まとめ
この記事では、マーケティングの一部の手法である集客について解説しました。 マーケティングと集客の関係性を理解することで、より集客力をアップさせた施策が進められ、売上アップにつなげることができます。また、マーケティング戦略に基づいた顧客ターゲットを明確に定めることで、集客施策が顧客にきちんと届くようになることで集客率の改善にもつながるのです。 集客しても人が来ない場合は、施策の進め方を見直すと良いでしょう。