飲食店の料理やドリンクなどのメニューは、お店の雰囲気や魅力といったお店の評判を左右する大きなポイントであり、競合店と差別化を図るうえでも重要な要素のひとつです。そのため、メニュー開発においては、自社の状況の分析やコンセプトの設定、コストや調理方法などの運営上のポイントなど、さまざまな点を意識して進めていくことが大切です。

今回は、メニュー開発の手順やコツ、意識したいポイントなどについて詳しく解説します。

飲食店においてメニュー開発は重要な役割を持つ

はじめに、飲食店におけるメニュー開発の役割を確認しましょう。

メニューの開発は、新規顧客やさらなるリピーター獲得のきっかけにつながります。開店したての飲食店ではまず、お店を体現するような「定番メニュー」を作ることが大切です。定番メニューがあれば、お店の打ち出し方も明確になってくるため、初来店したお客様もお店の魅力を端的に知りやすくなります。

定番メニューは、リピーターができて初めて「定番」となります。一度来店してくれた顧客が、初めて選んだメニューに魅力を感じて2回目以降も来店し、定期的に注文されるようになることで定番メニューはできていきます。そのため、定番メニューには何度でも選びたくなるような魅力が詰まっていることや、迷ったらひとまず選べばよいというような手軽さがあることが大切です。

なお、既に定番メニューがあるお店でも、「新メニュー」を定期的に開発することで店舗に新しいイメージを持たせることができます。新メニューの開発は、新たな顧客層へアプローチするきっかけになるため、新規顧客の獲得に繋がります。一方で、何度も来店してくれるリピーターを飽きさせない仕組みとしても重要な役割を果たします。

定番メニューと新メニューを2本の軸として、新規客獲得から常連客の増加を目指すことがメニュー開発においても目標の1つとなります。

メニュー開発の手順

メニュー開発といっても、ただやみくもに自分が思うメニューを作るだけは時間やお金を無駄に消費してしまいます。順を追ってお店の魅力を高めるメニューを作っていきましょう。

メニュー開発の手順
  1. 現状把握やリサーチを行いコンセプトを決定
  2. メニュー開発・試作・試食
  3. 原価計算を行い仕入れ先を選定
  4. ネーミングの決定と広告・販促

現状把握やリサーチを行いコンセプトを決定

メニュー開発の一歩目は、現状のお店の売上や顧客のニーズをしっかり把握して、コンセプトを決めることです。既存のメニューの販売実績、利益率を算出していくことで、新メニューにかけられるコストや目標なども立てやすくなります。

また、飲食店業界の市場や流行だけでなく、近隣の競合店や人気メニューなどをリサーチしましょう。お店自体のコンセプトとの相性も大切なので、リサーチによって得られた情報をすべてをメニューに活かす必要はないですが、さまざまな観点から現状を知ると顧客の求めているものが見えやすいです。

以上をふまえて、お店自体のコンセプトやターゲットを守りながら、新メニューを食べてもらう目的やどんな人に食べてもらいたいかを細かく明確に洗い出してみましょう。

メニュー開発・試作・試食

洗い出したコンセプトをもとに、メニューを実際に企画・開発しましょう。斬新さや見た目、美味しさなど大切なことは多いですが、店舗運営上必要な材料費や調理時間なども考慮することが大事です。大枠が整ったら、次は提供できるものになるまで試作と試食、改良を繰り返していきます。

メニューが完成に近づいたら、食器や盛り付けにもこだわってみてください。全体の色味のバランス、ターゲットの客層を考えた美しさを追求することで、メニューの印象が変わっていきます。

原価計算を行い仕入れ先を選定

原価の計算は、開発の段階から並行して行いましょう。原価があまりにも高すぎるとその分コストもかかり、利益も少なくなってしまいます。どれだけ見た目や味、内容が魅力的なメニューを作ったとしても、提供するうえでの課題が多くてはメニューに加えることが難しくなります。既存メニューで使っている食材を活用したり、原価を下げられる食材に代用できないかなど、品質を損なわない程度に調整してみてください。

原価に直接結びつく仕入れ先の選び方も重要です。常設のメニューにするのであれば、仕入れ値だけでなく通年の供給量にも注意しましょう。複数の業者から仕入れる必要がある場合は、ロスが出ないように管理する必要があります。

食材自体が売りになるようなメニューや、期間限定のメニューであれば品質をしっかり見極めて仕入れ先を選定しましょう。

ネーミングの決定と広告・販促

メニューができたら、価格や名前を決める必要があります。コンセプト決めで定めたターゲット像が親しみやすいものを考えましょう。ネーミング次第では、それがきっかけでSNS上で話題を呼んだり、興味を持ってもらえたりする可能性もあります。

次に大切なのは、売り出し方です。広告や販売促進の方法もターゲットに即したものにすることが大切です。例えば、10〜20代の女性がターゲットであれば、ターゲット層の利用が多いSNSにおしゃれな写真をアップしたり、店の前を行き交うサラリーマンや主婦がターゲットであればチラシや看板を大々的に行ったりなどの方法が挙げられます。

メニュー開発のコツやポイント

ここまでの手順をふまえても、実際にメニュー開発に取り組んでみると悩むポイントもあるでしょう。続いては、メニュー開発のコツやポイントをより深堀りしていきます。

メニュー開発のコツやポイント
  • 顧客のニーズを把握してコンセプトを明確にする
  • 伝わりやすい・親しみやすいネーミングにする
  • 「見た目」や「体験」を意識する
  • 適切な価格を設定する

顧客のニーズを把握してコンセプトを明確にする

最初のステップで紹介したコンセプト決めを明確にできていないと、誰に向けられたものなのかわからない中途半端なメニューに繋がってしまいます。コンセプトを無視して店舗の利用者層にはあまり魅力的に映らないメニューになってしまったり、逆にあれこれと詰め込み過ぎて結果的に誰がターゲットなのかわからないメニューになってしまう可能性があるのです。

たとえ味や見た目が良いメニューができても、顧客のニーズに合っていなければよいメニューとは言えません。ニーズは、普段の客層やお店の立地から考えられる客層、具体的には性別や年齢、職業といった細かい人物像(ペルソナ)を書き出していくことで少しずつ見えてきます。

顧客が求めているものを適切に把握しながら、店舗のコンセプトにもあわせたメニュー開発を行いましょう。

伝わりやすい・親しみやすいネーミングにする

ネーミングは、特にひと目見たときのわかりやすさが重要です。先にも述べた通り、魅力的なキャッチコピーのようなネーミングや話題性を呼ぶようなおもしろいネーミングができれば、メニュー名自体に集客効果が期待できます。食材や味、こだわりなどのさまざまな観点から、メニューの魅力・特徴をまとめてみてください。

また、「じっくり煮込んだホロホロとろけるタンシチュー」「ふわとろたまごのオムライス」など調理法や食感、ボリュームなどをオノマトペなどを使って表現するのも手です。多すぎてまとまらない場合は、「〜を添えて」「至極の〜を使った」といったリード文章を入れるのもおすすめです。

「見た目」や「体験」を意識する

お客様のなかには、料理を撮影して残したり、SNSに投稿したりと、見た目を重視する人もいるかもしれません。写真に映えるような美しい盛り付けはもちろん、食器・照明・内装・提供方法といった料理をたてる演出も意識しておきましょう。

目の前で「炙り」や「トッピング」などの最後の仕上げをする料理や、鉄板料理を目の前で焼くといった方法も、素敵な体験の提供につながります。食事そのものだけでなく、食事の時間や体験、空間なども含めて全体的に楽しんでもらえるよう、工夫してみてください。

適切な価格を設定する

メニューの内容を重視することも大切ですが、素材や内容にこだわりすぎて提供価格が高くなりすぎてしまうケースもあるので注意が必要です。他のメニューとのバランス、コンセプトやターゲットも考慮したうえで、適切な価格を設定するようにしましょう。予め想定された原価率の範囲でメニューを開発することが大切です。

メニュー開発時に気をつけてほしいこと

メニュー開発など、なにか新しいことを始める際には見落としがつきものです。以下では、メニューを開発するときの注意点をまとめているので参考にしてみてください。

メニュー開発時に気をつけてほしいこと
  • 店のコンセプトとの一貫性
  • 食材の安定供給
  • 調理のしやすさ
  • 食品ロス

店のコンセプトとの一貫性

新メニューは、お店のコンセプトや顧客ニーズとかけ離れないようにしましょう。今までのメニューやお店の居心地が好きで来店してくれているお客様にとって、あまりの変化はマイナスに影響してしまうケースもあります。場合によっては既存の顧客を離脱させる原因にもなりかねません。また、メニューそのものの変化はもちろん、それに伴う客層の変化によって店舗の雰囲気が大きく変わってしまうことも考えられます。

そのため、メニュー開発時には常にお店のコンセプトを見直し、一貫性を保てているか確認することが大切です。これまで築いてきたブランドを崩さないよう、常連客の期待も裏切らないような新規メニュー作りを意識しましょう。

食材の安定供給

斬新さや奇をてらうのも良いですが、新メニューで手に入りにくい食材を使うのはあまりおすすめできません。せっかく人気がでたのに、食材の供給が追いつかず売り切れが頻発することが起これば、お客様の不満にもつながりかねません。

数量限定や期間限定などの限定的なメニューであれば、提供数の少なさが話題性となり集客につながることもありますが、今後継続して売り出すメニューになるのであれば安定的に供給できるものなのかを意識しましょう。計画的に開発メニューの食材を選定することが大切です。

調理のしやすさ

新しいメニューの開発段階では、お店の通常の営業でしっかり調理・提供がスムーズにできるかどうかというポイントも見落としてはいけません。

試作の段階で、仕込みの時間は足りるか、働いている料理人の技術力で問題ないか、提供にかかるスピードはどれくらいかといったオペレーション単位の細かい部分も見えてきます。新メニューともなれば注文が集中する可能性もあるため、連続して調理する際の課題がないかも確認しておく必要があるでしょう。このように、さまざまな観点から調理のしやすさをチェックしてみてください。

食品ロス

新メニューの提供によって食材のロスが大きくなると、結果的に利益に繋がらずにメニュー開発の意味が無くなってしまうケースもあります。新メニューのために新しい食材や機材の仕入れを考えている場合は、コストや保管スペース、他の食材でロスが起きないかなどのバランスもしっかり確認してください。先述した通り、既存メニューの食材や機材で活かせるものは活かして、無駄のないメニュー開発を目指しましょう。

メニュー開発を外部委託する方法もある

「忙しくて手が回らない」「メニュー開発がうまくいかない」といった方は、外部委託するというのも選択肢のひとつです。外注は、プロに任せるため品質をある程度確保しながら、自社の人員を割かずにメニュー開発が行えるメリットがあります。

外注費がかかることや、打ち合わせなどのやり取りで完成まで期間を要する場合がある点はデメリットなので、メニュー開発を委託すべきかどうかは自店の状況や条件と照らし合わせ、何を優先すべきかを軸に考えましょう。

まとめ

飲食店における新メニューの開発は、新しい顧客の獲得や既存の顧客を飽きさせず喜ばせる手段のひとつです。開発の仕方次第では話題性を呼び集客に大きく貢献することも期待できるでしょう。

コスト面や提供のしやすさなどの課題もあるため、今回紹介したポイントやコツを意識して、お客様にお店の魅力をより伝えられるようなメニューを開発してみてください。

記事のURLとタイトルをコピーする