飲食店の営業時間において、ランチタイムやディナータイムの前後に従業員の手が空いてしまう「アイドルタイム」という時間帯があります。売上が見込めないことからアイドルタイムを極力なくしたいと思いがちですが、店舗の業態にあわせた有効活用の方法や、集客が見込めるさまざまな対策があります。今回は、飲食店におけるアイドルタイムについて、メリット・デメリットや活用方法を紹介します。
目次
アイドルタイムとは従業員の手が空く時間
「アイドルタイム」のアイドルとは、英単語のidleにあたり、「仕事がない」「働いていない」という意味を指します。飲食店の場合ではお客様が少なく、労働力の余る時間帯ということを示しています。アイドルタイムの反意語は「ピークタイム」といい、お客様の入れ替えが特に激しい飲食業界では、一日のなかでアイドルタイムとピークタイムが発生することがほとんどです。
飲食店のアイドルタイムの時間帯
飲食店のなかでも形態によってアイドルタイムの時間帯は異なります。ここでは、カフェ、レストラン、居酒屋の3種類にわけて紹介します。
- カフェのアイドルタイム
- レストランのアイドルタイム
- 居酒屋のアイドルタイム
カフェのアイドルタイム
カフェや喫茶店では、食事のために訪れるお客様のほかに、軽食やドリンク類を楽しむために利用するお客様も存在します。そのため、ランチタイムに一度ピークタイムを迎えたあとは、13時〜15時にはアイドルタイムになる場合が一般的です。その後、一般的におやつの時間、ティータイムとされる15時頃に再度ピークタイムを迎えます。
ティータイムなどカフェをメインとした時間帯だけの営業では大きな売上が見込めないと判断し、カフェレストランやカフェバーとして他の時間帯にも併用して営業する飲食店もあります。
レストランのアイドルタイム
食事を目的とするレストランの場合、ランチタイムとディナータイムが主なピークタイムであり、その間の15時〜17時がアイドルタイムです。そのため、レストランによってはその時間帯を従業員の休憩時間やディナーの仕込みの時間として、一旦お店を閉める場合もあります。また、カフェとレストランを併用して営業している店舗の場合はその時間帯にはカフェとして営業することもあります。
居酒屋のアイドルタイム
居酒屋では主に仕事帰りの会社員をターゲットにしているケースが多いため、開店から19時頃までが居酒屋にとってのアイドルタイムです。そのため、その時間帯の集客を図る目的でハッピーアワーとしてアルコールメニューの割引を行ったり、飲み放題プランを打ち出したりする店舗もあります。また、居酒屋を閉めている昼の時間帯にカフェや和食店を営業する「間借り営業」を行う店舗もあります。
飲食店のアイドルタイムのメリット・デメリット
飲食店におけるアイドルタイムは、単なる暇な時間というデメリットだけではなく、アイドルタイムがあることで得られるメリットも存在します。ここでは、飲食店のアイドルタイムについてのメリットとデメリットを紹介します。
飲食店のアイドルタイムのメリット
売上につながらず、コストばかりがかかるというマイナスな印象のアイドルタイムですが、たとえば午前から夜までの営業時間の長い飲食店であれば、アイドルタイムを使って従業員の休憩時間にあてることができます。また、ディナータイムに向けて仕込みをしたり、清掃作業を行ったりするなど、アイドルタイムがあることで作業を行えることはメリットといえるでしょう。
飲食店のアイドルタイムのデメリット
アイドルタイムとは、先に説明したように「仕事のない時間」であることから、アイドルタイムが多いということは当然売上が落ちてしまいます。アイドルタイムでも人件費や光熱費といったコストは発生するため、アイドルタイムの売上がコストを下回る場合には、給与も減ってしまうことでのアルバイトなどの従業員離れも考えられます。アイドルタイムが増えてきた場合には、なんらかの施策を加える必要があります。
飲食店におけるアイドルタイムの活用方法
アイドルタイムを無駄にすることなく有効活用することで、飲食店の運営に役立つことがいくつかあります。ここでは、飲食店におけるアイドルタイムの活用方法を3つ紹介します。
- アルバイトや従業員の休憩や教育
- 調理の準備・メニューの考案
- 掃除やレイアウトの変更
アルバイトや従業員の休憩や教育
ファミリーレストランなどのように、ランチタイムとディナータイムの間に閉店時間を設けない店舗の場合、その間のアイドルタイムを従業員の休憩時間にあてることで、従業員が次のピークタイムに向けて身体を休めることができます。また、新人従業員に対しては、飲食店の場合には事前に研修などを設けずに、実際の仕事を通して指導するOJT(On The Job Training)のように教育を進める店舗も多く、従業員教育の代わりとして、アイドルタイムに多くシフトをあてて実践トレーニングを行うこともあります。
調理の準備・メニューの考案
ランチタイムとディナータイムの両方があるレストランなどでは、ランチタイムのピークタイムで使用した食材の在庫の補充として買い出しや発注にあてたり、ディナータイムに備えて食材の仕込みをしたりすることがあります。また、創作料理をメインとするレストランの場合には、ディナータイム前の閉店時間に新メニューの開発の時間にあてることもあります。アイドルタイムには従業員にも気持ち的な余裕があるため、新メニューのアイデア出しや味のチェックとしても有効活用できます。
「メニュー開発の手順」について詳しくは、下記の記事もあわせてお読みください。
掃除やレイアウトの変更
営業時間のなかで一度閉店時間を設けないお店の場合やランチのピークタイムでレイアウトが乱れてしまった場合などは、清掃を行うにはアイドルタイムを活用するのがおすすめです。アイドルタイムであれば営業を行いながら各座席の汚れをチェックでき、タイミングにあわせながらしっかりと清掃を行うことができます。また、アイドルタイムにおける清掃の方法をマニュアル化しておくことで、どの従業員でも均一に店内清掃を行えるため、清潔感のある店内をキープできます。
さらに、歓送迎会や季節のイベントなどの予約が入った際などのレイアウト変更もアイドルタイムを利用するとよいでしょう。営業中の従業員の動線に問題がある場合にも、スムーズな移動ができるようにアイドルタイムであればレイアウト変更ができます。
飲食店のアイドルタイムに集客する方法
飲食店でのアイドルタイムは、仕込みや清掃などのために有効活用することもできますが、集客を得られることに越したことはありません。どのような対策を行えばよいのか、最後に飲食店のアイドルタイムでの集客方法を紹介します。
- ハッピーアワー
- 限定メニュー
- 時間帯で業態を変える
アイドルタイムの集客方法1:ハッピーアワー
ハッピーアワーとは、バーや居酒屋などの飲食店がアルコール類を割引して提供する時間帯のことを指します。多くは平日夕方のアイドルタイムに行われることから、ランチをとるのが遅くなったお客様や、ディナーを早めにとりたいというお客様の利用が期待できます。アルコールを安く飲めるということから、普段利用していない新規顧客の獲得のきっかけにもつながるでしょう。
アイドルタイムの集客方法2:限定メニュー
アイドルタイムの集客については、立地やターゲット層にあわせた限定メニューの提供もおすすめです。たとえば、オフィス街に近く、通勤客を多く見込める立地であれば、通勤時間帯限定での朝食メニューの提供ができます。また、住宅街のレストランであれば、アイドルタイムに在宅している主婦層にあわせて、ティータイムの限定デザートなどお得感のある限定メニューもおすすめです。限定メニューを食べたお客様が好印象を持てば、ほかの時間帯での再来店につながる見込みがあります。
アイドルタイムの集客方法3:時間帯で業態を変える
飲食店において、一日中ずっと同じ業態で営業を続けなければならないということはありません。たとえば、昼間はそば屋で夕方から居酒屋やバーとして、昼夜で業態を変えて営業をする店舗もあります。また、その場で料理を提供せずに、アイドルタイムだけはテイクアウト専門にするという営業方法もあります。このように一日の営業時間をふたつの業態をわけて運営することを「二毛作ビジネス」とも呼ばれ、集客アップや売上アップを期待できます。
まとめ
今回は、飲食店におけるアイドルタイムについて、メリット・デメリットと活用方法について紹介しました。飲食店でのアイドルタイムは、単なる暇な時間帯ということはなく、従業員教育や仕込みの時間、メニュー開発など、店舗によってさまざまな用途があります。ハッピータイムや限定メニューの活用で新たな集客も見込めるアイドルタイムを、今後ぜひ有効活用してみてはいかがでしょうか。
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