パン屋の開業をするにあたり、パンの魅力をさらに引き立たせるような内装デザインは、特に考えておきたい大切な要素です。お客様の好みにあった内装であることで、通りすがりの人の目に留まり、パンの味や接客に満足できればリピーターにつながる効果も期待できます。パン屋開業に内装デザインが大切であるポイントについて、かかる費用や業者選び、開業までに必要な手順などもあわせて紹介していきます。

パン屋開業において内装工事が大事な理由

パン屋にとって、パンの味がお店の人気を左右するというのはもちろんではありますが、パン屋の開業にあたり、内装デザインはパン屋の成功に向けて大切な要素です。もし、「パン屋は味で勝負だから内装はこだわらない」、「内装よりもスタッフの接客対応が大事」、「内装にお金をかける余裕がない」ということで内装をおざなりにしてしまっては、新規開店で訪れたお客様はどう思うでしょうか。店内の照明が暗いせいでおいしいパンがきれいに見えなかったり、通りすがりの人がパン屋であることに気づかなかったりしたのではせっかくの新規顧客を獲得できません。

実際に、開店当時から人気が続くパン屋を見てみると、内装にさまざまなこだわりが感じられることがあります。新規顧客をリピーターにするためには、お客様にとって通いたいと思えるような内装デザインであることが重要なポイントといえます。

パン屋の内装デザインを考えるうえで重要なポイント

パン屋の内装デザインが大切であると理解したうえで、どのようなことに重点をおいて考えたらよいのでしょうか。ここでは、パン屋の内装デザインで重要なポイントについて紹介します。

パン屋の内装デザインを考えるうえで重要なポイント
  1. 清潔さを維持しやすいつくりにする
  2. 働きやすいレイアウトを考える
  3. 内装材・什器・インテリアまでこだわる
  4. パン屋の店舗に適した照明を選ぶ

ポイント1:清潔さを維持しやすいつくりにする

パンをはじめ食品を販売する店舗では、デザインの美しさ以上に、清潔感を維持できる作りであることが重要です。清潔感を感じる内装であることで、来店したお客様が居心地のよさを感じながら買い物をすることができます。水拭きがしやすく耐水性のある素材を壁紙や、汚れが付きにくく掃除しやすい床材を用いて、衛生面を維持しやすい内装を目指しましょう。また、通路を広く取ることで、客同士がすれ違う際などに荷物や洋服がパンに触れてしまうことを防ぐことができます。

ポイント2:働きやすいレイアウトを考える

パン屋の内装デザインは、お客様が利用しやすいことも大切ですが、スタッフが働きやすいレイアウトであることも重要です。パン屋は主に「セルフ式」と「対面式」がありますが、それぞれのポイントを把握し、どちらのタイプが自店に向いているかを考えてみましょう。

セルフ式

セルフ式とは、店内に陳列されているパンをお客様自身が選んでトレーなどに載せていく方式です。フロアを広く使って陳列できることから、数多くのパンを販売することができるうえに、スタッフはレジやパン作りといった業務に専念できることがメリットです。

また、セルフ式ではお客様とスタッフとのやりとりが少ないことから回転率が高く、人件費削減にもつながります。しかし、スタッフがパンを陳列する際にお客様と動線が混在してしまうことや、個包装にしない陳列の場合の衛生面での管理に対する工夫も必要になります。

対面式

対面式とは、レジの隣にショーケースを設けてパンを陳列し、お客様が選んだパンをスタッフがショーケースから取り出してレジ決済を行う方式のことを指します。店内にパンを陳列するセルフ式とは異なり、ショーケースだけの省スペースで店舗をまかなえることや、ショーケースに入っていることから衛生面での管理がセルフ式よりも容易であることがメリットです。

ショーケースにパンを陳列するだけなので、店内レイアウトを考える手間がない一方で、ショーケースが小さい分、商品数を増やせないことや、お客様とのやりとりによって回転率が低くなることはデメリットといえるでしょう。

ポイント3:内装材・什器・インテリアまでこだわる

先にも説明したように、どんなにおいしいパンでも、店内が粗雑な内装であっては、それだけでパンがおいしく見えなくなってします。パンを陳列する什器によってお店のイメージも大きく変わるため、内装にはこだわりをもちたいものです。

たとえば、自然素材の木材を用いることで、木の持つ温かみがパンの見た目に加わり、よりおいしそうな印象になり、お客様もリラックスしてパン選びをすることができます。ただ、木材はコストがかかる素材でもあるため、予算も踏まえて考えるとよいでしょう。

ポイント4:パン屋の店舗に適した照明を選ぶ

住宅のなかでも部屋によって照明の色を変えるように、パン屋にとってもパンの見た目をよくするためには照明選びは重要なポイントです。パンや食品の見た目をおいしく見せるためには、暖色系の照明が適しているとされており、暖色系の照明は店内の雰囲気自体も明るく見せる効果を期待できます。また、照明の色だけでなく、シャンデリアやペンダントライトのような照明器具にもこだわることで、店内をよりおしゃれに演出することができます。自店のイメージにあわせて、適切な照明を探してみるとよいでしょう。

内装工事に関する基礎知識

パン屋の開業をすすめるにあたり、内装工事の知識も頭にいれておくとよりスムーズでしょう。ここでは内装工事に関する基礎知識を紹介します。

工事業者の種類

内装工事の業者には、内装デザインを行う「デザイン・設計会社」、施工のみを行う「施工会社」、内装デザインと施工を行う「設計・施工会社」の3つの種類があります。

デザイン・設計会社の場合、内装デザインや設計を自社で行い、施工は他社が行います。デザインについては高い質が期待できますが、施工会社を別で依頼しなければならないという手間があり、デザインの担当者によっては高い料金になる場合もあります。

施工会社の場合は、施工会社が施工職人を直接手配することから比較的費用を抑えやすいメリットがあります。ただし、デザインに特化しているわけではないため、希望のデザイン通りにならないことも考慮する必要があります。

設計・施工会社は、設計・デザインから施工まで一貫して行うため、デザインと施工の打ち合わせの行き違いが起こりにくいことがメリットです。スムーズに進めやすい一方で、内装工事全体での費用が高くなる場合もあります。

業者選びは複数の見積もりをとり、比較・検討を行うことが重要です。各業者から提示された金額に目を通すことで、見積もりの相場を把握することもできます。

内装の工事にかかる費用

業者の種類を知ることにあわせて、内装工事にはどのくらいの費用がかかるのかを知っておくと、予算や業者決めの際によりスムーズに進められます。パン屋の開業の場合、内装工事費以外にも電気設備や空調・換気設備工事、給排水設備工事などさまざまな費用がかかります。また、開業したいと思う物件が「居抜き物件」か、「スケルトン物件」かによっても費用が変わってきます。ここでは、居抜き物件とスケルトン物件の両者の違いについて説明していきます。

居抜き物件

居抜き物件とは、それまで入っていたテナントの内装がそのままの状態で残っている物件のことを指します。そのため、前のテナントの状況によって、どのような内装工事が必要なのか、それによって費用も変わってきます。電気やガスも備わっている状態なので設備工事は不要ですが、電気の熱量やガスの火力がパン屋として適しているのかなど、店舗の状態を確認する必要があります。

スケルトン物件

スケルトン物件とは、中がコンクリートの状態になっている物件のことで、内装を最初から作る必要があります。そのため、パン屋向けの厨房設備以外にも、床や壁、天井まで最初から手配しなければなりません。スケルトン物件は、15坪程度であれば1坪あたり30~50万円程度が相場とされていますが、厨房設備を加えると45〜60万円を目安とするとよいでしょう。

参考:パン屋の内装 | 飲食店開業マップ

工事から開業までのステップ

内装工事は、物件の規模によって異なりますが、2週間〜2カ月、状況によってはそれ以上かかる場合もあります。建物の場所によっては、夜間しか工事ができないという場合もあるので、事前の確認が必要です。

工事から開業までにかかるスケジュールは、一般的には下記の通りになります。

  1. 内装業者選びと打ち合わせ
  2. 見積りや完成予想図の提示
  3. 内装業者の決定と契約
  4. 着工
  5. 完成・引き渡し
  6. 保健所・消防署の検査

パン屋の開業について詳しくは、下記の記事もあわせてお読みください。

パン屋の開業に必要な情報を紹介|費用や資格、開業までの流れも解説

おしゃれな内装デザイン・レイアウトのコツ

自分のパン屋を理想的なおしゃれな店舗にするためには、成功事例を参考にしたり、自ら学んだりするなど、知識を習得することでイメージにも幅が広がります。最後に、おしゃれな内装デザインやレイアウトのコツについて紹介します。

おしゃれな内装デザイン・レイアウトのコツ
  • 資料や他社事例を参考にする
  • 陳列方法やディスプレイのコツも学ぶ
  • デッドスペースを活用する
  • コンセプトをふまえて統一感をもたせる

資料や他社事例を参考にする

内装デザインについて業者と打ち合わせをする際に、他社の事例や内装デザインの資料など、事前に多く目を通しておくことで、より具体的に自分のイメージを伝えることができます。また、自分のイメージに近い図面や画像をいくつか集めておくことで、業者にも伝わりやすく、イメージのズレを防ぐことができます。

陳列方法やディスプレイのコツも学ぶ

お客様が店内に入った際に、飾り付けもなく、ただ整然とパンが並べられた店内よりも、見ているだけでワクワクするようなディスプレイや、商品選びに迷ってしまうような陳列がされている店内のほうが、また訪れたいという気持ちになるでしょう。陳列に工夫をして、フランスパンなど長いものはカゴに立ててみるなど、立体感のある陳列をしてみるとボリューム感のある商品陳列になります。

また、窓ガラスから陳列したパンが見えるようにすることもポイントです。パン屋に限らず初めての店に入るのはドキドキするものですが、窓ガラスから中が見えることで通りすがりの人が「入ってみようかな」と興味を持ってもらえることも期待できます。

デッドスペースを活用する

セルフ式のパン屋の場合、壁に沿ってパンを陳列していくうちに、中央にポッカリとデッドスペースができてしまうことがあります。その場合は、中央にもテーブルを配置して季節商品やおすすめ商品を陳列して目を引くなど「アイランド」という活用方法を実践してみましょう。

また、店内外に空きスペースがあるのであれば、いくつかのテーブルと椅子を並べて、イートインのようなスペースを設けると、ちょっとお腹が空いたというお客様の休憩スペースにできます。イートインスペースがあると知ったお客様がそのままリピーターになることも見込めるでしょう。

コンセプトをふまえて統一感をもたせる

パン屋の開業にあたって、どのようなお店にしたいかというコンセプトを明確にすることが必要です。コンセプトを最初に明確にしておくことで、開業までの内装デザイン以外にもメニュー作りなどさまざまな事柄に統一感を持たせることができます。

内装についても、テイストや色について統一感がないと店内がごちゃごちゃした印象になり、せっかくのパンの魅力も薄れてしまいます。高級感を出したいのであればインテリアなどのテイストを落ち着きのあるものを選び、ナチュラルなイメージにしたいのであれば木目のインテリアを選ぶなどで、全体的に統一感を図りましょう。業者との打ちあわせの際にもコンセプトや想定しているイメージを伝えることで、より具体的な打ちあわせをすることができます。

パン屋のコンセプトについて詳しくは、下記の記事もあわせてお読みください。

パン屋のコンセプト|重要性と作り方のコツを徹底解説!

まとめ

今回は、パン屋の内装デザインについての大切なポイントを紹介しました。パン屋の内装デザインについては、自店がどのような販売形式にするかによって、デザインや設計だけでなく費用も大きく変わります。どのようなお店にしたいのか、コンセプトを明確にしたうえで、複数の業者と打ちあわせを重ねながら、より理想に近いパン屋の開業を目指してみましょう。

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