マーケティング戦略に沿って商品やサービスの売上を伸ばすためには、適切に情報を集めて市場を分析することが大切です。また、分析結果をうまくマーケティング戦略に活かすためには、「フレームワーク」の活用も重要です。
ビジネスにおけるフレームワークとは、戦略を立てたり要因を分析したりする際に用いられる思考の枠組みのことを指します。フレームワークを使うことで、解決すべき課題をいくつかの要素に分解して整理し、状況に適した施策をスムーズに立案できるようになります。
そこで今回は、マーケティング戦略が重要な理由を説明したうえで、現状分析、マーケティング戦略の立案、目標設定や振り返りに活用できるフレームワークを紹介します。
目次
マーケティング戦略が重要な理由とは?
マーケティング戦略を考える際のフレームワークについて知っておく前に、まずマーケティング戦略が重要である理由を解説します。マーケティング戦略が重要な理由として、次の3つが挙げられます。
以下では、これらの理由について詳しく説明します。
消費者が多様なニーズを持つようになったから
消費者のニーズについて、家電製品であれば従来はテレビや冷蔵庫、洗濯機のような、いわゆる「三種の神器」や、3Cともいわれるクーラー、カラーテレビ、車が求められるのが一般的でした。これに基づいて商品を製造・販売すればすぐに売れたため、そこまで消費者のニーズを深掘りして考える必要性は低かったのです。
しかし、近年はモノや情報で満たされる消費者が増え、ニーズが多様化してきたことから、これまでのように商品を製造しても簡単には売れなくなっています。消費者1人ひとりのニーズを把握するとともに、競合他社との差別化を図らなければ売上を伸ばしにくくなっているため、マーケティング戦略を立案する重要性が高まっているのです。
消費者と企業の距離感が近くなったから
以前は、「4マス広告」のようにテレビCMやラジオCM、 新聞広告や雑誌広告を活用して、大衆に向けて企業の商品やサービスを一方的にアピールする方法が主流でした。しかし、近年はインターネットやスマートフォンが急速に普及したことによって、SNSやWEBサイトを通じて企業と消費者が直接コミュニケーションを取れるようになっています。
消費者が利用する媒体も多様化しているため、今後は媒体ごとにどのような情報を発信していくのか、いかに消費者との関係性を高めていくのかを意識しなければなりません。そのため、マーケティング戦略を考えて消費者ごとに適切なアプローチ方法を立案する重要性は、今後さらに高まっていくと考えられます。
消費者の行動特性を把握しやすくなったから
以前は、代理店や販売店で商品やサービスを対面販売する方法しかなかったため、大まかな年齢や性別といった情報でしか消費者の動向を把握できませんでした。しかし、近年はIT化が進んだことによって、消費者の属性を正確に把握できるようになっています。
消費者の属性ごとに購買履歴や閲覧履歴などを分析すれば、より精度の高い消費者の行動分析をすることが可能です。消費者ごとに適したマーケティングをおこなえばスムーズに売上につなげられるため、マーケティング戦略が重要といえるでしょう。
現状分析に役立つフレームワーク
マーケティング戦略の重要性が理解できたら、次は現状分析や戦略立案などに役立つフレームワークについて知っておきましょう。企業に適したフレームワークを活用すれば、精度の高いマーケティングが可能になるため、フレームワークごとの特徴をよく理解しておくことが大切です。
まずは、現状分析に役立つフレームワークについて、詳しく説明します。
3C分析
3C分析は、市場において企業を取り巻く環境を調査するうえで役立つフレームワークです。3C分析には、次の3つの観点が含まれています。
- Customer:市場・顧客
- Company:自社
- Competitor:競合他社
これら3つの「C」を徹底的に分析することで、市場において企業がどのような立ち位置にあるのか、どのような強みや弱みを持っているのかを客観的に把握できます。
たとえば、「進出を予定しているエリアでは日用品のニーズが高い。競合他社が少ないだけでなく品質・価格ともに自社が有利なのでうまく事業を展開できそうだ」といったことが挙げられます。
このように、3C分析の結果に基づいてマーケティング戦略を考えれば、根拠に基づいたアプローチが可能になるでしょう。
SWOT分析
SWOT分析は、企業が持つ強みや弱みを、企業内だけでなく企業外からの視点でも分析するフレームワークです。フレームワークに含まれる観点には、次の4つが含まれています。
- Strength:強み
- Weakness:弱み
- Opportunity:機会
- Threat:脅威
SWOT分析だけを用いて企業の強みや弱みを把握することもできます。しかし、3C分析の結果を活用して、企業が持つ強みや弱みをどのように活かすか(機会)、どのように課題に立ち向かうか(脅威)を考えれば、より精度の高い分析をすることが可能です。
PEST分析
PEST分析は、次の4つの観点から分析をするフレームワークです。
- Politics:政治
- Economy:経済
- Society:社会
- Technology:技術
企業に直接関係する観点が含まれるフレームワークが多い中で、PEST分析はよりマクロな視点で企業に与える影響を分析するのが特徴です。
たとえば、「政府がオフィス出社でなく在宅ワークを推進しておりIT技術も急速に発展していることから、今後は自宅で働く個人に向けた商品開発に力を入れていこう」といった戦略が考えられます。
激しく変化する社会情勢や消費者のニーズに対応し続けるためにも、PEST分析は重要なフレームワークといえるでしょう。
マーケティング戦略の立案に役立つフレームワーク
現状分析ができたら、次は実際にマーケティング戦略を立案していきます。マーケティング戦略の立案に役立つフレームワークとして、次の3つが挙げられます。
- STP分析
- 4P分析
- 4C分析
これらのフレームワークごとの特徴を理解しておけば、高いマーケティング効果が出る戦略を練ることができるでしょう。以下で詳しく説明します。
STP分析
STP分析は、マーケティング戦略を考えるうえで基本的な要素が含まれているフレームワークです。具体的には、次の3つの要素が含まれています。
- Segmentation:セグメンテーション
- Targeting:ターゲティング
- Positioning:ポジショニング
セグメンテーションでは、市場を年齢や性別、職業や趣味などでグループ分けします。ターゲティングでは、セグメンテーションしたグループの中からターゲットとする市場を絞り込みます。そして、ポジショニングでは、ターゲットとする市場でいかに競合と差別化を図り、立ち位置を確立していくかを考えます。
たとえば、30~40代女性向けの化粧品を開発してきたメーカーが新しい市場を開拓するためにSTP分析をしたケースを考えてみましょう。
新しい市場を開発するために、年齢・性別・職業でセグメンテーションを行うとします。
ミドル層の肌に合う商品開発をしてきたノウハウを活かして、「肌のシミやシワが気になってきた30~40代のサラリーマン」をターゲットとして設定し、他社では提供されていない「職場や営業先で若々しく見られたい男性向けの化粧品」のシリーズを立ち上げるいった戦略が考えられます。
この流れに沿ってマーケティング戦略を考えれば、企業が持つ強みを活かしながら有利な立場で市場に参入できるようになるでしょう。
4P分析
4P分析は、次の4つの観点でマーケティング戦略を立案するのが特徴です。
- Product:製品
- Price:価格
- Place:流通
- Promotion:販売促進・プロモーション
Productでは、企業が手がける商品やサービスの強みや他商品との違いなどを明確にします。Priceでは、ターゲットが入手しやすいだけでなく、企業にしっかりと利益を残せるような価格設定をおこないます。
そしてPlaceでは、消費者にどのように商品やサービスを届けるかという方法を考え、Promotionでは、予算や求める効果に応じて適切な広告宣伝方法を検討していきます。
たとえば、従来よりも肌触りのよい高品質な化粧水を、1本1,500円でオンラインショップ限定で販売し、SNSで話題性を高めてアクセス数を増やしていくといった戦略が考えられます。
4C分析
4Cは、企業目線でマーケティング戦略を考える4Pとは違い、顧客目線で戦略を練るフレームワークが特徴です。4Cには、次の4つの要素が含まれています。
- Customer Value:顧客価値
- Cost:経費
- Convenience:利便性
- Communication:コミュニケーション
このフレームワークでは、企業が提供する商品やサービスによって顧客がどのような価値を感じるのか、入手する際にどれくらいの費用や時間がかかるのかが重要です。また、商品やサービスを入手しやすい仕組みが整っているか、顧客が求めている情報が伝わり、顧客の声が企業に届いているかといった点もあわせて考えることが求められます。
たとえば、乾燥しがちな肌の悩みを解消できる高品質な化粧水が、自宅にいながら送料無料で1,500円で手に入れられるようにするとともに、特設サイトでアフターフォローを充実させるといった戦略が考えられます。
戦略の目標設定や振り返りに活用できるフレームワーク
現状分析やマーケティング戦略の立案だけでなく、目標設定や振り返りをする際にもフレームワークは有効です。
以下では、戦略の目標設定や振り返りに活用できるフレームワークについて、詳しく説明します。
SMART
SMARTは、理想的な目標設定をするために有効なフレームワークです。SMARTには、次の5つの項目が含まれています。
- Specific:具体的であるか
- Measurable:測定可能か
- Attainable:達成可能か
- Result-based:成果を出すことが前提になっているか
- Time-oriented:期限が明確か
これらの要素を満たす目標を立案することで、マーケティング戦略を振り返りやすくなります。
PDCA
PDCAは、「PDCAサイクル」ともいわれるように、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)Act・Action(改善)を繰り返してマーケティング施策の精度を高めていくフレームワークです。マーケティング戦略以外にも、さまざまな分野で活用できることから、すでに導入している企業もあるかもしれません。設定した目標が適切であったかを評価するときにも使えるので、先ほど紹介した「SMART」とあわせてマーケティング戦略の目標設定や評価に活用するとよいでしょう。
また、PDCAはなるべく早く回すことも重要です。計画を立案したのにいつになってもマーケティング施策を実行しなかったり、実行した施策の評価が遅れたりすると、マーケティング効果を高めるのが難しくなります。社内リソースにあわせて、うまくPDCAサイクルを回せる仕組みづくりをすることも重要です。
MECE
MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)は、「漏れ」や「重複」を避けて戦略を練るというフレームワークです。マーケティングに限らず、さまざまな場面でロジカルシンキングをする際に役立てられています。
たとえば、ターゲットを「既婚の40代夫婦」とした場合、事実婚の40代男女がターゲットから外れてしまいます。また、ターゲットとする職業を「不動産所有者」「会社員」としていると、不動産を所有している会社員が重複してしまい、余計なコストをかけてしまうことが考えられます。
マーケティング戦略を実施した後に想定した結果が出なかった場合、このフレームワークを用いて要因を分析すれば、解消すべき課題が見つかるかもしれません。PDCAサイクルとうまく組み合わせれば、より精度の高いマーケティング戦略を考えられるようになるでしょう。
まとめ
ここでは、マーケティング戦略が重要な理由を説明するとともに、マーケティング戦略の立案や評価に役立つフレームワークも紹介しました。
企業に適したマーケティング戦略を練るためには、フレームワークごとの特徴を理解したうえで必要に応じてうまく組み合わせることが大切です。ここで説明した内容を参考にして、高いマーケティング効果が期待できる戦略を立案しましょう。