店舗経営をするのであれば、なるべく売上を伸ばしていきたいもの。しかし、安定的な経営を行うためにはいくつかのノウハウがあります。これらのノウハウを知っておくことで、苦境に陥った時も適切な打開策を考え出すことができるでしょう。
そこで今回は、すでに店舗を経営している人やこれから経営を始めたいと考える人に向けて、店舗経営に役立つノウハウを説明します。
効果的な店舗経営を始めるためのノウハウとは?
店舗の経営を順調にスタートさせるためには、事前準備をしっかり整えておくことが大切。具体的なノウハウとして、以下の5つが挙げられます。
これらのノウハウを身につけておけば、スムーズに店舗経営を始められるようになるとともに、早い段階で売上を伸ばせるようになると期待できます。ここからは、効果的な店舗経営を始めるためのノウハウについて、詳しく説明します。
市場を細分化しターゲットを明確にする
「なるべくたくさんのお客さんに足を運んでもらえるような店舗にしたい」と考える人は多いですが、具体的なターゲットが絞れていなければ、経営方針に一貫性を持たせづらくなってしまうので注意が必要です。ターゲットを明確にするためには、まずは市場を細分化することが大切。来店見込みの高いエリアはどこかや、特に足を運んでほしい顧客の年齢層はどれくらいかといった考え方でターゲットを具体化させていくと、おのずと経営方針がはっきりしてくるでしょう。
また、ターゲットとする顧客の性別や家族構成、所得や学歴といった具体的な人物像(ペルソナ)を設定すると、さらに顧客目線に近い視点で店舗経営を考えられるようになります。設定したペルソナを店舗スタッフと共有することで、提供するサービスの方向性が、店舗をオープンしてからスムーズに売上を伸ばせるでしょう。
競合店の調査をおこなう
業種によっては、競合店が多くスムーズに売上を伸ばせなくなるかもしれません。しかし、事前に競合店の調査をおこなっていれば、ターゲットに対して「オリジナリティのある魅力的な店舗だ」というイメージを持ってもらえるような施策を考えやすくなります。
例として、ファッション用品店を経営するケースを挙げます。周辺エリアの競合店を調査した結果、自分の店よりも安く服を販売している店舗が多ければどうすべきでしょうか。もちろん、さらに安い値段で販売するのもよいですが、古着を取り扱ってみたり、値段は高くても質の良い生地を使用した衣類を販売したりといった選択肢も考えられます。
競合店について調査し、市場における自店の位置づけを客観的に評価することによって、強みとしてアピールできる部分を明確化しやすくなるでしょう。
店舗経営のコンセプトを考えておく
店舗の経営を始める前には、コンセプトを練っておくことも大切です。どのような商品やサービスを、誰に、どのような方法で提供するのか、といった内容を明確にできていれば、ターゲットに喜んでもらえる店舗を実現しやすくなるでしょう。
また、考えたコンセプトが実際にターゲットにとって魅力的に映るかどうかを客観的に評価することも大切。たとえば、若い男性をターゲットにした飲食店の場合、ボリュームが少ないおしゃれなメニューを売りにしても魅力を感じてもらうことはできないかもしれません。適切なコンセプトを考えるためには、いかに顧客目線で商品やサービスの選定や販売方法、店舗のイメージづくりなどができるかという点が大切になります。
対象エリアを明確にする
販売しようとしている商品やサービスを、どのエリアを対象として提供するかを考えておくことも大切です。
地域密着型の喫茶店を経営しようとしているのに、より多くの顧客を呼び込もうと幅広いエリアを対象に広告を出すといった手法をとってしまうと、経営に一貫性がなくなり、思ったように売上が伸びなくなるかもしれません。一方で、宅配でおこなうレンタル衣装店を経営しようとしている人が、店舗の徒歩圏内のみにしか営業をかけていなければ、なかなか集客数は伸ばしにくいでしょう。
このように、同じエリアで店舗経営を始めたとしても、業種が違うと販売対象とするエリア(商圏)が変わってきます。商圏にどれくらいの見込み客がいるのか、時間帯や季節によって商圏が変わるのかといったポイントをあらかじめ調査しておくとよいでしょう。
具体的な事業計画を立てる
店舗オープンの準備が忙しいと、事業計画の作成は後回しにされてしまいがちです。しかし、事業計画ができていないと、オープン後の経営が順調なのかどうかが判断できません。売上や営業利益がどのくらい上がっていればよいかという目標を立てるためにも、開業前にできるだけ具体的に計画を作っておくことが大切です。
また、店舗経営に必要な資金を調達する際に、金融機関などは事業計画書を参考にすることが多いです。安易な事業計画書になっていると、必要な資金を集められなくなる危険性があるので注意が必要です。事業計画書がどれくらい入念に記載されているかは、第三者からの信用を得るうえでも重要になるということも知っておきましょう。
健全な店舗経営を続けるためのノウハウとは?
スムーズに店舗経営を始められたとしても、長期的に利益を出し続けられるノウハウを持っていなければ、健全な店舗運営を続けることはできないでしょう。理想的な店舗経営を目指すためには、事前に作成した事業計画書をもとに、売上や経費、最終的に残る利益が予想に近づくよう心がけることが大切です。
また、店舗経営を続ける中で、計画通りに事業が運営できているかを定期的に評価することも重要です。特に、売上がどのような構成で成り立っているかを把握することを意識しましょう。店舗経営における売上は、以下のように計算できます。
- 売上=新規顧客の売上+リピート顧客の売上
もし売上が伸び悩んでいる場合、新規顧客の売上に問題があるのか、リピート顧客の売上に問題があるのかによって、取るべき対策が変わってきます。適切に経営を立て直すためには、想定と違う動きをしている指標がどこなのかを見極めてたうえで対策を考えることが大切です。
新規顧客の売上に課題がある場合
新規顧客の売上に課題がある場合、新規顧客を効果的に獲得できるノウハウを身につけておく必要があります。以下では、新規顧客の獲得につながる3つの施策を紹介します。
- チラシを配布する
- 看板や旗などのアナログ施策も重要
- SNS運用で積極的に情報発信する
チラシを配布する
チラシは、郵便受けに直接投函したり、新聞などに折り込んで住宅に配布することで顧客を集める手法。不特定多数の人に幅広く店舗の情報を与えられるので、効率的に新規顧客を獲得できると期待できます。
印刷枚数や配布エリア、配布方法によってはある程度のコストはかかりますが、商圏が限られている店舗や、新聞を読む世帯を中心に新規顧客を集めたい場合に、チラシ配布は効果的です。興味を惹くデザインにしたり、チラシに割引チケットを添付するといった方法を実践すれば、さらに効果を高めることも可能。チラシを直接配布すれば、柔軟に対象エリアを変更できますし、店舗などに設置していれば、自由にチラシを持ち帰ってもらうこともできるでしょう。
看板や旗などのアナログ施策も重要
看板や旗といったアナログな施策も、新規顧客を集めるために有効な方法とされています。通行人の目を惹く看板にすれば、遠くからでも店舗の存在をアピールすることができます。季節や時間帯などに応じて柔軟に表示内容を変えられるのもポイントです。
SNS運用で積極的に情報発信する
最近は、SNSを利用して情報を集めたりコミュニケーションをとったりする人が増えています。店舗情報をSNSで確認する人も多く、定期的に情報発信していればスムーズに情報を拡散できるでしょう。
うまく情報が広まれば、ほかの手法よりも効率的に新規顧客を集めることも可能。顧客と直接コミュニケーションをとることもできるので、信頼感を高めたり入店するハードルを下げることにもつながります。SNSによっては、インスタグラムのように画像を主体として情報発信するタイプのものもあるので、店舗外観や内装といった雰囲気づくりにはしっかりコストをかけてこだわっておきたいものです。
リピート顧客の売上に課題がある場合
リピート顧客の売上に課題がある場合、新規顧客の獲得方法とは違ったアプローチ方法をおこなうことも大切です。
以下では、リピート顧客を増やすための施策について詳しく説明します。
再来店してもらうためのきっかけを用意する
新規顧客を集めることには限界があるので、いかに再来店してもらうためのきっかけを与えるかが大切です。具体的には、再来店すると特典がもらえるポイントカードを発行したり、次回予約をすれば割引してもらえるといったものが代表的。会員登録をしてもらうことで、DMやメールマガジンなどでお得な情報を提供するのも選択肢のひとつだといえます。
商品・サービスの販売実績を分析する
リピート客を増やすには、提供している商品やサービスのうち、どれが好評で、どれが売れていないのかを分析することも重要です。「ABC分析」は、売上データをもとにどのメニューに注力すべきかを分析する方法です。
たとえば、上の表のように4種類のメニューを提供している店の場合は、月間売上順にメニューを並べ、上のメニューの売上と足し合わせた「累積売上」の列と、売上構成比(累積売上/全体売上)を計算する列を追加します。例えば売上構成比が上位80%をA、81~95%まではB、それ以降はCという形で注力するメニューはどれなのかをグループ分けします。(A,B,Cの切り分け方は自由です)
Aに分類された売れ筋商品・サービスを積極的に販売しつつ、売上構成比が低いCの商品やサービスのクオリティを改善させれば、顧客のリピートを促しやすくなるでしょう。
経費に課題がある場合
店舗経営をしていると、つい売上に意識が向いてしまいがちです。しかし、最終的に利益を多く残すためには、店舗経営にかかる経費についても把握しておかなければなりません。
特に、人件費や原材料費、家賃や光熱費といった部分は、経費の中でも大きな部分を占める傾向があります。経費をうまく抑えて売上を伸ばせるようになれば、経営をより健全なものにできるでしょう。以下では、経費に課題がある場合の対処方法について詳しく説明します。
労働時間あたりの売上を算出する
経費を見直す際に検討するのが難しいのが人件費。最低限の人数で店舗経営をしていても、思ったように売上が出せず悩んでいる人は多いようです。
そのような場合は、 売上高を労働時間で割ることで労働時間あたりの売上を出してみるのがおすすめ。計算した数値が目標よりも低い場合は1人当たりの生産性が下がっているサイン。その場合は、アルバイトのシフトを減らしたり、手が空いたスタッフにチラシ配布などの別の仕事を与えることも有効です。
効率の悪い原材料がないかをチェックする
店舗によっては、過剰に在庫を抱えていたり、特定のメニューにしか使用しない原材料を大量に仕入れているケースもあるようです。
このような在庫の状況では、結果的に賞味期限が切れて廃棄につながったり、使われないまま倉庫のスペースを占有したりで店の利益を圧迫している可能性が高いでしょう。定期的に、仕入れ方法や提供するサービスの見直しをおこなうことも意識しておきましょう。
まとめ
ここでは、店舗経営をスムーズに始めるためのノウハウや、健全な店舗経営を維持するためのノウハウについて説明しました。
店舗に残る利益にはさまざまな要因が影響しているため、もし店舗経営がうまくいかない場合は、原因を細分化して少しずつ対処していく必要があります。ここで説明した内容を参考にして、店舗経営に必要なノウハウを活かして効果的な事業運営ができるようにしておきましょう。