商品・サービスや企業・団体などへの顧客からの問い合わせ先として、「カスタマーサポート」という部門があります。しかし、カスタマーサポートとはどのような業務を行い、企業・団体に対してどのような役割を果たし、どのようなスキルが必要なのかという具体的なところまでは見えにくいものです。今回はカスタマーサポートの具体的な役割と、実際にカスタマーサポートを自社に設置したいという場合に成功させるポイントなどを解説していきます。
目次
カスタマーサポートとは?
カスタマーサポートとは、メールや電話による顧客からの問い合わせに対応する活動や部門のことを指します。企業や組織によっては、ヘルプデスク、コールセンター、お問い合わせ窓口などさまざまな呼び方があります。顧客をサポートするという言葉どおり、自社の商品・サービスについての問い合わせやクレーム、故障やトラブル時のアフターフォローといった、顧客が持つ疑問や不満などの課題解決をするというのが主な役割です。顧客の疑問や不満をいかに解消できるかということが企業イメージをはじめ、顧客満足度や収益の向上につながるため、重要な役割を担っていると言えるでしょう。
カスタマーサポートと似た職種との違い
カスタマーサポートは、企業や組織によってさまざまな呼び方があると先に説明しましたが、職種や業務内容が明らかに異なる場合もあります。いくつかの職種について、カスタマーサポートとの違いを解説します。
- カスタマーサクセスとの違い
- ヘルプデスク・テクニカルサポートとの違い
- コールセンターとの違い
カスタマーサクセスとの違い
カスタマーサクセスとは、直訳すると「顧客の成功」ということで、課題解決が主であるカスタマーサポートとあまり差異がないとも言えるでしょう。しかし明らかに異なるのは、顧客からの問い合わせがきて初めて動くのがカスタマーサポートであるのに対し、カスタマーサクセスは顧客からのアクションがある前にこちら側から対策を講じるというものです。カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違いをまとめた表は下記のようになります。
カスタマーサポート | カスタマーサクセス | |
目的 | 顧客の課題解決 | 顧客の成功を手助けする |
業務内容 | 問い合わせ対応・クレーム対応など | サービスの利用促進・改善 |
設置する企業 | 業種を問わない | 顧客と定期的に接点を持つことが多いSaaS、通信、IT業界の企業が中心 |
関わるタイミング | 顧客から問い合わせがあった時 | 能動的に提案を行う |
顧客との関わり | 単発的 | 継続的 |
ヘルプデスク・テクニカルサポートとの違い
ヘルプデスクは製品の操作方法や不具合などについてヒアリングを行い、サポートするというのが主な役割で、テクニカルサポートは技術的なサポートする役割です。対象は個人顧客以外にも、クライアントや社内のSE担当に対応することもあります。そのため、製品やシステムに関する高度な知識が必要となります。
カスタマーサポートとヘルプデスク・テクニカルサポートの主な違いは下記の表のとおりです。
カスタマーサポート | ヘルプデスク・テクニカルサポート | |
主な連絡手段 |
電話・メール、チャット
|
|
対応する領域 | 商品やサービスの相談や問い合わせ | IT機器やシステム関連の操作説明やトラブルなど技術的な問い合わせ |
コールセンターとの違い
コールセンターは名前のとおり、電話での対応が主な連絡手段となります。また、商品を購入した「カスタマー」とは異なり、コールセンターの場合は購入前やサービス申し込み前といった見込み顧客も対象となります。カスタマーサポートとコールセンターとの主な違いは下表のとおりです。
カスタマーサポート | コールセンター | |
主な連絡手段 | 電話・メール・チャットなど | 電話 |
対象とする顧客 | 既存顧客 | 見込み顧客 新規顧客 既存顧客 |
顧客対応 | インバウンド | インバウンド アウトバウンド |
カスタマーサポートの業務内容
顧客の対応が主となるカスタマーサポートですが、具体的にどのようなことを日々行っているのでしょうか。ここではカスタマーサポートの業務内容について3つ紹介します。
- 問い合わせ対応と課題の解決
- 顧客管理
- 業務ナレッジの共有・一元化
問い合わせ対応と課題の解決
顧客が企業に対してメールや電話で問い合わせをする第一の窓口ともいえるカスタマーサポートは、企業の顔ともいえます。顧客の疑問や不満、クレームなどに速やかに対応し、課題解決に結びつけるのが大きな役割の1つです。
顧客管理
顧客とのやりとりだけがカスタマーサポートの業務ではありません。顧客の氏名や住所、電話番号などの情報とともに、問い合わせ内容やこれまでの購入履歴、電話やメールでのオペレーターとのやりとりも記録しておきます。さらに営業部門と連携して顧客情報や課題をフィードバックするなど、営業部門のサポートも行います。
業務ナレッジの共有・一元化
顧客から問い合わせの多かった質問をまとめてマニュアル化し、業務ナレッジ(業務上の知識)として企業内でWeb共有すれば、「その人しか答えられない」などの業務の属人化を防ぐことができます。また、業務上のナレッジをFAQとしてコンテンツ化して企業サイト上にアップすることで、顧客にとっても自己解決の手がかりにもなります。
カスタマーサポートの役割
顧客対応や顧客管理などの業務があるカスタマーサポートは、企業内や顧客に対してどのような役割を求められているのでしょうか。ここではカスタマーサポートの役割について3つを紹介します。
- 課題解決により顧客満足度を高める
- 顧客のニーズを収集する
- 企業の顔として対応し、ブランドイメージ向上に努める
課題解決により顧客満足度を高める
顧客満足度とは、顧客が購入・利用した商品・サービスの質や性能だけではなく、アフターサービスの質や充実度も問われてきます。そのため、カスタマーサポートとは、自社の商品・サービスを購入・利用した顧客へのその後の対応が主な業務となります。さらに、顧客が抱く疑問や不満といったことに対する答えをいかに迅速に確実に解決できるかによって顧客満足度が変わってくるでしょう。このように、カスタマーサポートは企業の顔となる役割のため、丁寧で適切な対応が求められます。
顧客のニーズを収集する
カスタマーサポートは、顧客への対応だけでなく、問い合わせで得られた情報を企業側にフィードバックするという役割もあります。問い合わせ対応のなかで耳にした要望や質問、意見やクレームを拾い上げて、顧客の生の声としてフィードバックし、サービス改善に結びつけます。それによりさらに顧客満足度の高い商品・サービスの提供につながります。
企業の顔として対応し、ブランドイメージ向上に努める
カスタマーサポートは、顧客が一番目の窓口として問い合わせを行う部署であるため、企業の顔であり、ブランドイメージにも影響する役割でもあります。そのため、顧客からの不満やクレームといったネガティブな問い合わせに対しても真摯に対応し、少しでも解決につなげるようにすることで企業全体のファン獲得や客単価の向上にもつながっていきます。今はSNSによってどんな内容にも関わらず評判も広まりやすいため、カスタマーサポートの対応は企業にとって重要な役割といえるでしょう。
カスタマーサポートに必要なスキル
カスタマーサポートとして従事し、顧客満足度や企業の収益アップにつなげていくためには、どのようなスキルが役に立つのでしょうか。ここではカスタマーサポートに必要なスキルとして3つ紹介していきます。
質問や傾聴によりニーズを把握する力
顧客のサポートを行うためには、顧客の声を通して、顧客が今何を求めているのか、何を必要としているのかを把握していく能力、傾聴力が必要な能力といえるでしょう。電話でもメールでも、顧客のなかには要点をうまくまとめるのが苦手な方もいます。その場合にはじっくりと顧客の話を聞いて、顧客の意図を理解し、会話のなかで的確に質問をして具体的なニーズを引き出すというヒアリング力も重要です。さらに、クレーム対応の場合には感情的になっている顧客に対しても常に冷静であることも必要となります。
迅速かつ正確に業務を処理する力
電話やメール、チャットなどで行われるカスタマーサポートでは、業務を迅速かつ正確に処理できる能力が求められます。顧客管理システムを用いて顧客情報を取り出したり、会話しながら操作したりすることから、管理システムの適切な取り扱いも重要となります。顧客の個人情報を扱っている以上、ケアレスミスが大きな問題となってしまう恐れもあるため、迅速性と正確性に加え、マルチタスクをこなせる対応力も必要でしょう。
状況に応じた対応力
カスタマーサポートは基本的にマニュアルに従って対応することが多いものの、マニュアルに載っていないようなイレギュラーなケースも発生します。その際に、マニュアルに固執せず臨機応変な対応ができなければ、クレームに発展する可能性もあるため、顧客情報やこれまでの履歴を確認しながら状況に応じて対応できる力が必要です。
カスタマーサポートの位置づけと動向
カスタマーサポートは、直接的な利益につながらないことからコストだけがかかる部門であると思われがちですが、カスタマーサポートで得られた顧客情報は、営業部門や開発部門でも多いに役立つことが期待できるのです。
また、現在のカスタマーサポートは、人工知能を活用して自動的に会話ができるチャットボットなどのDX(デジタル・トランス・フォーメーション)の導入が進んでおり、対人でなければ対応できない場合の業務にのみオペレーターが対応できるように変化しています。チャットボットは人件費や効率化の問題だけでなく、顧客が困った際に24時間いつでもサポートができるというメリットもあります。すぐに対応してくれるという顧客満足度を高めるためにメールや電話、チャットなど、どの経路からの問い合わせでも柔軟に対応できる整備が急務とされています。
カスタマーサポートを成功させるための4つのポイント
自社で既にカスタマーサポートを導入している場合や、今後導入を検討している場合、どのようなことに注意をすればよいのでしょうか。最後に、カスタマーサポートを成功させるためのポイントを4つ解説します。
- サポートの質を均一化する
- 顧客情報を共有する
- 顧客の要望に先回りして対応する
- 社内のリソースを確保し、サポートの質を向上させる
サポートの質を均一化する
個々のオペレーターのサービスレベルが一定でないと、問い合わせ時の対応にムラができ、解決まで時間がかかるどころか、結局解決できないということが起こります。サポートの質を均一化させるには、問い合わせ内容に対する解決方法をマニュアル化することが重要です。また、オペレーターに対して勉強会を開き、商品・サービスへの理解度を深めるだけでなく、自社商品・サービスを実際に利用してもらって、理解してもらうという方法もあります。
顧客情報を共有する
顧客にとって、問題解決できるまでは同じオペレーターで完結したいと思うものですが、カスタマーサポートでは複数のオペレーターが絡むことは仕方ないことです。そのため、少しでも顧客満足につながるように、その顧客情報を全体的に共有できることが重要となります。一度の問い合わせで解決できない問題は特に、問い合わせ履歴を時系列で共有して、誰が見ても即座に対応できる体制を整備しましょう。そのためには顧客の一元管理ができるCRMツール(顧客関係管理ツール)の活用もおすすめです。
CRMについて詳しくは、以下の記事もあわせてお読みください。
顧客の要望に先回りして対応する
顧客からの問い合わせに対して、顧客の要望を理解し、先回りして解決することで顧客満足度の向上につながる見込みがあります。カスタマーサポートを利用する際、担当部署をたらい回しにされたり、なかなか答えが出なかったりすることで顧客は不満を覚えます。即座に顧客の悩みやニーズに応えるためには、よくある質問(FAQ)をサイトに設けたり、チャットボットを解決したりすることもおすすめです。それでも解決できないという顧客のために、カスタマーサポートと直接対応できる窓口も設置しておきましょう。
FAQについて詳しくは、以下の記事もあわせてお読みください。
社内のリソースを確保し、サポートの質を向上させる
ここでの「リソース」とは、カスタマーサポートについての、社内における技術やノウハウのことを指します。先にも解説したように、迅速かつ正確で、その場に応じた対応をするためには、顧客情報を把握し、データを共有する必要があります。しかし、毎日の個々の業務におわれ、カスタマーサポートの改善には手がまわらないということも考えられるでしょう。その場合には、コンサルティングを受けて改善のヒントを得たり、アウトソーシングに依頼したりするのも1つの手段です。社内で技術や情報を確保するには、ワークショップやディスカッションを行い、社内で共有するという手もあります。
まとめ
顧客からの問い合わせに対応する部門であるカスタマーサポートは、企業の顔として顧客満足度の向上を目指す重要な役割です。顧客の声を通して顧客のニーズを把握するだけでなく、正確で迅速な処理能力やその場に応じた対応力も求められます。勉強会を定期的に開催するなどでサポートの質を高め、顧客が満足するカスタマーサポートを目指してみてはいかがでしょうか。
記事のURLとタイトルをコピーする